おもちゃと呼ぶには本気過ぎた任天堂「ウルトラスコープ」 (2/2ページ)
このひと手間が気分を高めるんです。そして、左右についたふたつの赤いボタンで連結したパイプを自在に伸縮させて、鏡を上下に操ります。
特筆すべきはモーター駆動で鏡が上下するところでしょう。普通の玩具メーカーなら、コストや生産性を考慮して、ここは手動で伸び縮みする仕様にするはず。

でも、ボタンを押すだけでパイプが「ウィ~ン」と音をたてて伸びていくところが、本物の秘密ギアっぽくてたまらないんです。
巻き尺のようなスチール製の細いテープをモーターで押し出したり、巻き取ったりすることで、およそ70センチも伸びる機構をコンパクトなボディーに破綻なく組み込んでいます。
発売から46年たったいまでも完全に作動するのですから、その堅牢さ、設計は完璧だと言えるでしょう。
いや~、いま55歳を過ぎたおっさんがいじっているだけでシビれます。それは子供騙し的な要素が微塵もないからにほかなりません。
2980円という高価格だったため、売り上げはイマイチだったようですが、当時、これを買ってもらった幸運な子供は、自分がスパイ映画の主人公になった気分を存分に味わったことでしょう。
『ウルトラスコープ』から感じられる、採算を度外視し、既製品にはないトンガったものを作ろう、というトライ精神。それこそがのちの『ゲームウォッチ』、『ファミコン』、そして数々の名作ゲームの誕生につながったのだとわたしは思います。
(写真・文/おおこしたかのぶ)