日産の無資格検査問題はなぜ起きた?問題のあらましと経過を解説

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日産の無資格検査問題はなぜ起きた?問題のあらましと経過を解説
日産の無資格検査問題はなぜ起きた?問題のあらましと経過を解説

9月29日、日産自動車が、グループで製造した車の完成検査の一部を正規の検査員以外が実施していたことが発覚。自動車業界の安全、信頼を大きく揺るがす重大な問題として現在も世間を騒がせています。

いったい、なぜこのような不正問題が起きてしまったのでしょうか。今回は日産の無資格者検査問題にピックアップし、事件のあらましと現在までの経過を解説していきます。

目次

日産の無資格検査問題とはどのような内容なのか? 日産では無資格者の検査が常態化していた!? 無資格検査問題が自動車販売台数にも影響 日産には信頼を回復して復活してほしい!

■日産の無資格検査問題とはどのような内容なのか?

そもそも日産の不正問題の本質は何でしょうか? まずは問題の概要から説明しましょう。今回問題になっているのは「『型式指定制度』の条件となっている『完成検査』を、検査の資格がない検査員が行っていた」ことです。

車が公道を走るためには、国土交通省で「この車は安全に走行できるか」1台ずつ審査を行い、基準を合格する必要があります。

「型式指定制度」とは、自動車メーカーが自社で車を生産・販売する場合に、あらかじめ国土交通大臣に申請を行うことで、国の審査を省略できるの制度のことです。国が1台1台チェックする必要がある審査を、パスできるのですから、本来はとても合理的な制度といえるでしょう。

もちろん制度を利用する条件として、品質のチェック、確認を自社で1台ずつ検査する必要があります。これが「完成検査」です。完成検査ではヘッドライトが付くか、ハンドルが回るか、ブレーキは問題ないか、などなど、さまざまな項目の検査をしなければなりません。さらにチェックする人も、知識や技能を身につけた資格を持つ人のみが検査できるという規定を社内で設け、国に届け出ています。

日産ではこの社内規定で選任された検査員以外が完成検査を行っていました。型式指定制度は国と自動車メーカーのある意味信頼関係で成り立っている制度です。この信頼をほごにして、不正していたわけですから、例え品質が保たれていたとしてもルールを破る重大な信用問題といえるでしょう。

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■日産では無資格者の検査が常態化していた!?

今回の問題は国土交通省の抜き打ちの立ち入り検査によって発覚。さらに調査を進めていくにつれ、この不正がなんと数十年前から常態化していたことが分かりました。なぜこれほど長い間、問題が発覚せず不正が続いてしまったのでしょうか。

社内には法令違反の認識を持っていた人もいたようです。「いけないことだとはわかっていたけど、ずっとやってきたことだから問題だと思わなかった」と話す現場の検査員もいたとのこと。しかし、これだけ長い間問題とならなかったのは、やはり企業体質が原因ではないでしょうか。

10月19日に行われた記者会見で、日産の西川社長は「工場の課長と係長の間のコミュニケーションにギャップがあった」という「現場への責任転嫁」のような発言を行い、日産社内で反発があったようです。

当然ですが、西川社長や経営陣にも管理体制のずさんさや、コーポレートガバナンスの欠如で責任を問わなければなりません。問題の責任は日産全体にあるのです。

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■無資格検査問題が自動車販売台数にも影響

ここで10月度の新車販売ランキングを見てみることにしましょう。日産が完成検査問題で2週間の出荷停止に追い込まれたため、販売台数が半減。リーフやノートなどで勢いついていただけに年末へ向けた繁忙期に深刻な影響出そうです。

結果的にトップ10から人気モデルの「ノート」が姿を消し、2,741台で前月比17.7%という激減、フルモデルチェンジして期待された「リーフ」も3,629台に留まりました。

昨年の三菱自動車による燃費偽装問題では、軽自動車の「デイズ」シリーズだけが生産停止による影響を受けましたが、今回は日産車が全体的に台数減となっており、比べ物にならないほどの影響といえるでしょう。

さらに、三菱自動車で生産され、不正問題とは関係のないデイズまでもが前月比39.3%と激減。日産ブランドへの不振が表面化した格好です。

2017年10月度乗用車販売ランキング

順位

通称名

メーカー名

10月度台数

前月比

前年比

1

N-BOX

ホンダ

21,234

78.7

152.9

2

ムーヴ

ダイハツ

13,972

109.4

111.8

3

タント

ダイハツ

10,660

91.6

101.0

4

アクア

トヨタ

10,031

77.8

80.4

5

プリウス

トヨタ

10,014

75.4

71.3

6

ワゴンR

スズキ

8,801

73.8

148.4

7

ミラ

ダイハツ

7,483

85.5

146.0

8

ヴォクシー

トヨタ

7,417

95.5

93.5

9

ルーミー

トヨタ

7,090

100.0

10

フリード

ホンダ

7,060

65.3

77.1

新車販売台数ランキングが発表されたタイミングで生産が再開されましたが、ブランドへのダメージは避けられません。回復には膨大な時間と経費がかかりそうですが、多くの日産の車が魅力的であることは今までもこれからも間違いありません。

特に、「リーフ」がどこまで伸ばすか、史上初のEVによる首位ということも考えられます。全ては日産とそのディーラーによる速やかな信頼回復にかかっているといえるでしょう。

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■日産には信頼を回復して復活してほしい!

日産の問題発覚後、スバルでも検査資格のない検査員が検査していたことが発覚しました。もはや日産やスバルだけの問題ではなく、日本の産業界全体の問題としてとらえる必要が出てきました。

タカタのエアバッグ問題、神戸製鋼のデータ偽装、そして今回の事件。日本の製造業界では近年"メイドインジャパン"のブランドを揺るがしかねない致命的な不祥事が相次いでいます。築き上げたものを壊すのは一瞬ですが、失った信頼を再び得るのは大変な時間かけなければなりません。

日本の産業はここが正念場です。

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