早慶戦、敗れた慶大も収穫大。エース丹治は手応え十分。 (2/2ページ)

ラグビーリパブリック

12点差として慶應はさらに活気づいたが、そこから早稲田に2トライ2ゴールを奪われた15分間が、大学選手権までの宿題だろう。

 BKのエースである丹治がチームのポイントに挙げるのがブレイクダウン(タックルの後のボールの奪い合い)だ。課題というよりは強み。ランナーが封じられていようといまいと、慶應で前半から光っていたのは両LOの辻雄康、佐藤大樹ら、強くてよく走るFW陣だ。ここぞの場面ではガリガリ、ボカスカと擬音が聞こえてきそうな激しい集団プレーで相手ボールに絡み、圧力をかけた。相手のミスも誘った。明治、帝京とも互角に戦い自信をつけたFWの強さは慶應の武器。それが、最後の15分は沈黙した。

 慶應は相手1人に対して2人がかりでタックルにいくことを徹底しているが、その1人目のタックルで相手の動きを封じられなくなったことから、密集場面での劣勢が始まった。

 再び丹治はその局面の課題を、チームの取り組みに戻して話した。

「早稲田はワイドに広がってアタックしてくるので、守っていて判断が徹底できないところがあった。その少しずつの後れがタックルのずれ、食い込まれる原因にもなる」(丹治)

 早稲田の展開スピードに判断と意思統一が遅れ、個々のタックルが食い込まれ、密集でプレッシャーを受けて、チーム防御の出足が鈍る。すると早稲田のテンポの速さに拍車がかかって…という循環。

「(判断に加えて)低いタックルは、絶対にやらなければならないこと」(丹治)

 部の基本である低いタックルと、チームとしての判断力。足元を見つめ、課題を一つひとつ克服していけば優勝できる。優勝できる――今季、帝京に3点差と迫った体感もある彼らは、いま最も実感を持ってそう言えるチャレンジャーかもしれない。

 慶應は次週、対抗戦最終戦の青学大との試合を乗り切って、大学選手権に向かう。8連覇中の帝京、選手のポテンシャルと一体感がある明治、再戦なれば早稲田との一番も楽しみだ。各チーム意思統一も進むこれからは、この日はまだ多かった単純なミスも数を減らしていくはず。リーグ戦の大東大はじめ、ディフェンスのいいチームが元気なことも、これからのシーズンを引き締めてくれるのではないか。天理大がリードする関西勢を加えて、個性さまざまな各校が本番でどんな色を出してくるのか。大学シーンが佳境に入る。

(文:成見宏樹)
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