東京都世田谷区の「基準地価」が下がっている理由

まいじつ

CORA / PIXTA(ピクスタ)
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2017年の基準地価(都道府県地価調査価格)が、9月に国土交通省から発表された。住宅地は全国平均で前年比マイナス0.6%となり、26年連続の下落だ。基準地価は都道府県が判定する7月1日時点の土地価格で、公示地価とともに土地取引の目安とされる。

社会の高齢化と人口減少という傾向から、将来的に不動産市場の縮小は不可避だ。不動産価格(=資産価値)は今後、ほとんどのところで下落していくと考えて間違いない。

ただ、全国平均でマイナスでも、東京圏や大阪圏のように上昇し続けているところもあり、その二大都市圏のなかでもまた、それぞれ濃淡がある。

では、どのようなところなら不動産価値が落ちにくいのか。東京都内の不動産業者は「不動産価値に直結する大きな要素は何よりも“立地”」だと話す。それには“3つの意味”があるという。

「まず、首都圏全体のなかで、そのエリアがどこにあるかという大雑把な立地。次に、ターミナルからの距離。これは銀座のようなブランド力の高い街や都心からの距離とも言えます。そして最後は、最寄り駅からの距離。もちろん、同じ路線の中でも勝ち負けがあります」(同・不動産業者)

山手線の内側は資産価値が高いが…

首都圏では東京都の不動産価格が最も高いが、その都内で一番交通の便がいいのは山手線の内側。この地域は絶対に不動産価値が落ちない“鉄板エリア”だが、なかでも都心3区(千代田、中央、港)は将来的にも強力なブランド力を維持し続けていくだろうと見込まれている。

一方、東武伊勢崎線や京成線のような北東部の不人気といわれる沿線でも、北千住のように抜群に交通の便がいいところは問題ない。実際、2017年基準地価で上昇率の上位を占めたのは、荒川区、北区、足立区などだった(上昇率トップはプラス6.3%の荒川区南千住8丁目)。

対照的に、高級住宅地の代名詞ともいえる“世田谷”の注目度は相対的に下がっているという。

世田谷区では昔から「駅から離れた場所の方が格上」と見なされる風潮があり、それらに沿ったマンションや幹線道路に近い物件が分譲されやすい特殊事情があった。 要するに、駅の近くの騒がしい場所よりも、郊外の静かな住宅地が好まれたということだ。しかし、移り住んだ人たちが高齢化して、アクセスに不便を感じているという話もある。前出の不動産業者は「市場が求めているマンション(住宅)と最寄り駅の距離は、近年どんどん短くなっている」と最近の不動産価値のトレンド事情を明かす。また、古き良き住宅地の面影を残そうとするあまり、再開発や新しい街づくり」が世田谷には少ないともいわれる。

子育て世代を「拒絶」

例えば、世田谷区は待機児童数で全国ワーストの地区だ。保坂展人世田谷区長が自ら住民説明会に出席するなど、同区は保育所の整備に積極的だが、土地所有者が了承しても周辺住民が反対運動を起こしている。昨年までに5カ所で根強い反対運動があった。

「保育所の新設に反対するということは、子育て世代に対し『移住してくるな』と言っているようなものです。エゴイズムに凝り固まった高齢者が大挙して住んでいる世田谷区の人気が落ちるのも無理はありません」(不動産コンサルタント)

現役世代が移り住んでこない街の不動産価値が、将来的に下落するのは必然と言えるだろう。

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