世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 第253回 アジアの片隅にある貧困の移民国家 (2/3ページ)
その状況で「生産性向上」により人手不足を埋めたとき、わが国は経済成長の黄金循環に入る。ところが、人手不足を移民で埋めてしまうと、実質賃金はさらに下落し、生産性向上も起きない。経済成長率は抑制され、わが国には「アジアの片隅にある貧困の移民国家」という未来が待ち受けている。
移民反対論を唱える際に、筆者は「日本の文化伝統を守る」「外国人犯罪を防ぐ」といった論旨はあまり用いない。理由は、この種のレトリックで移民反対を説く識者は大勢存在しているためだ。逆に「生産性向上」「実質賃金上昇」「経済成長の循環」といった観点から移民反対論を展開しているのは、ほぼ筆者のみである。
さて、移民反対論を主張する際に重要なのは、前述の「レトリック」に加えて、「他国の事例」に倣うことだ。他国が失敗した政策をわざわざわが国が推進する必要はない。最も注目すべきは、やはり移民国家化が社会の崩壊をもたらしつつある欧州諸国、特にオーストリアの事例であろう。
オーストリアでは、12月18日、中道右派の国民党と、マスコミから「極右」とレッテル貼りされている自由党との連立政権が発足した。国民党党首、弱冠31歳のクルツ党首が、オーストリアの新首相に就任した。国民党と自由党は、共に10月の総選挙において、移民反対の公約を掲げて勝利した。特に自由党は「反移民」「反イスラム」の姿勢を示していた。
新たにオーストリアの副首相となった、自由党のシュトラッヘ党首は、'89年、'90年にネオナチの活動に携わったとして、ドイツで拘束された経験を持つ。オーストリア自由党ほどの移民反対の主張を展開する政党が、EU(欧州連合)加盟国であるオーストリアの政権に就いたわけである。時代が大きく変化しているのを感じる。新政権発足日、ウィーンの大統領府では新内閣の宣誓式が執り行われた。大統領府の周辺では、「極右」とレッテル貼りされる自由党の政権入りに反対する団体が、デモ行進を繰り広げていた。
オーストリア新政権は、移民・難民のオーストリア社会への統合を重視すると明言している。特に難民申請を認められなかった人については、祖国への送還を早めることについても政策的な合意がなされている。
下図(※本誌参照)の通り、オーストリアの若年層失業率は2桁に達している。