玉木正之のスポーツ内憂内患「大相撲暴行で見えてきた『人情相撲』の現実」 (2/2ページ)
さらに、それ以上に問題(と私が思う)なのは、相撲をあまり見ず、好きでもなく、よく知りもしない人(テレビのコメンテイターに結構多い)が、「拵え相撲? 星の貸し借り? 八百長じゃないか! 仲間内でそんな悪いことをしていいのか!」と、正義漢ぶって短絡的に憤ることだ。
そんな人には、現役時代の貴乃花親方も兄の若乃花と優勝決定戦をやったときには負けましたよ‥‥などと言っても通じない。足をボロボロに痛めた貴乃花を武蔵丸は責めなかったじゃないですか‥‥と言っても、アレは八百長だったのか?‥‥と野暮な言葉を返されかねない。「人情相撲」も八百長の一種と捉えられるに違いない。
現役時代の貴乃花は見事に素晴らしい横綱だった。そして親方となって、自分の「ガチンコ相撲道」を貫いているのも見事である。
一方、1年6場所もあるなかで、人情相撲や星の貸し借りが生じるのも人間なら仕方ないことで、多くの力士がそんな世界で生活していることもまた事実だ。
そんななかで起きた今回の「日馬富士vs貴ノ岩暴行事件」と「白鵬vs貴乃花親方対立事件」。もしもかつての時津風親方(横綱双葉山)だったら、「バカモン! どっちもほどほどにしろ!」と、一喝して幕引きだろう。
玉木正之