サザエさん一家は“伝統的な家族”の姿なのか? 「日本の伝統」を疑う (2/2ページ)
例えば、ロシアの伝統民芸品の印象が強い「マトリョーシカ」だが、実は歴史は浅く、それどころか、もともとロシアになかったものだという。
マトリョーシカの由来にはいくつか説があるが、比較的信頼性が高い説として、藤井さんは「日本・箱根が起源」という説を紹介している。
箱根とは一体どういうことなのか?
実はこの土地は昔から木工品が有名で、江戸時代には東海道を往来する人や湯治客を相手に、「十二卵」という土産物が誕生した。これは木で作られた上下に分割できる卵の中に、少し小さな卵、さらに少し小さな卵となっている「入れ子細工」である。そして卵は12個あるので、「十二卵」だ。
その後、明治に入り、卵は「七福神」に。その一方で、塔ノ沢にはロシア正教の避暑保養所ができる。
そして1890年代、この保養所に出入りする正教会の修道士あるいは、箱根観光に来たロシアの鉄道王であり大富豪のマモントフ夫妻のどちらかが、この七福神人形を気に入り、ロシアへ持ち帰ったのだという。
七福神人形は、モスクワ郊外にある芸術家の大パトロンのサロンに持ち込まれ、そこで刺激を受けた芸術家や職人たちが「マトリョーシカ」を作り上げ、1900年のパリ万博での大評判につながる…というのだ。
これは諸説ある内の一説である。ただ、現在、「マトリョーシカ」はロシアの名産品として、日本人がよくお土産として買って帰ることが多いのは事実だろう。藤井さんはその行為について、「日本→ロシア→日本」という入れ子細工になっていると指摘する。
著者の藤井青銅さんは、ラジオの放送作家であり、日本史やお菓子のご当地パイなどにも精通している。ラジオをはじめ、ずっと面白いことを仕事にしてきた藤井さんが「日本の伝統」をどう見ているのか。そんな読み方をするのも面白いかもしれない。
(新刊JP編集部)