東野圭吾原作の映画化第2弾「祈りの幕が下りる時」

まいじつ

東野圭吾原作の映画化第2弾「祈りの幕が下りる時」

映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『祈りの幕が下りる時』

配給/東宝 TOHOシネマズ日本橋ほかにて1月27日より公開
監督/福澤克雄
出演/阿部寛、松嶋菜々子、溝端淳平、伊藤蘭、小日向文世ほか

原作はベストセラー作家の東野圭吾の『新参者』シリーズで、阿部寛が主人公の刑事・加賀恭一郎を演じてテレビ化された。映画化は『麒麟の翼~劇場版・新参者~』(2012年)に続いて2度目となる。

このシリーズには快楽的連続殺人鬼も非情なテロリストもまず登場しない。普通の、ささやかな人々の、罪を犯す背景とその哀しみが、刑事・加賀を通して描かれてゆく。そういう意味ではこの新作は、まさに“新参者”シリーズを象徴するような出来栄えとなった。福澤監督は『下町ロケット』(TBS系)、『陸王』(同)のヒット・テレビドラマで知られ、今回このシリーズは初登板。阿部とはその『下町ロケット』で知り合ったそうだ。これらのテレビドラマはボクも熱心に見ていた視聴者のひとりなので、頼もしい。

東野版「砂の器」かも知れない

東京・下町のアパートで女性の絞殺死体が発見され、その部屋の住人の男性も行方不明。捜査線上に著名女性舞台演出家・浅居(松島菜々子)が浮かび上がるが、彼女にはアリバイがあった。現場の遺留品には日本橋を囲む12の橋の名前が書き込まれていたことを知った加賀(阿部寛)は激しく動揺する。それはかつて失踪した加賀の母につながっていたからだ…。

映画を見ながらまず彷彿とさせたのは『砂の器』だ。松本清張の名作として1974年には映画化もされ大ヒットしたものだが、疑惑の著名人、流浪の旅、過去の秘密を封印するための哀しき殺人、晴れ舞台でのクライマックスなどなどが重なり合う。さらに溯れば水上勉原作で1965年に映画化もされた『飢餓海峡』のイメージもダブる。これは東野版『砂の器』かも知れない。

何しろ、これまで謎だった加賀の母の事情や行方も明らかになり、事件のカギを握るのは彼か? という掟破りの展開ともなる。これが最終作ではないだろうが、ひとつの区切りとなる作品となったことは間違いない。前半はやや説明調だが、後半、真相が徐々に明らかになり、役柄が伏せられている小日向文世の存在が明確になってくるあたりの“凄絶な過去と秘密”のくだりは大いに引き込まれた。

すっかりこの役を手の内に入れた阿部は、自分の母親に関連する可能性も大ありの事件だけに冷静ではいられない加賀の心理を巧みに演じ、松島とのガップリ四つの芝居場も堂々たるもの。加賀ファンにはお約束である“行列に並ぶといつも直前で買えない”シーンもちゃんと用意されているので、ご安心を。

加賀はなぜ日本橋署に“新参者”として赴任したのか? も分かる。ラスト、日本橋署を去るあたり感無量となる。前作『麒麟の翼』より、ボクはズバリ楽しめた。

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