ニッポンの「超大作映画」秘史が全部わかる!<総まくり・これが「歴史を変えた」革命的10作だ!> (2/2ページ)
こだわり派の黒澤らしく、撮影は遅れに遅れ、撮影所所長は予算と日数オーバーの責任を取って辞表を提出。
東宝は途中までのフィルムを編集して公開するよう命じたが、試写では大決戦の直前で映像がストップ。
「これの続きは?」
重役にそう聞かれた黒澤は、堂々と「1コマも撮っていません」と告白。あまりのおもしろさに追加予算が決まり、重役は「存分にお撮りください」と告げた。撮影中止を誰もが惜しむ出来栄えだったのである。
映画ジャーナリストの大高宏雄氏は、「人間の條件」(59~61年、松竹)や「砂の器」(74年、松竹)と並び、「飢餓海峡」(65年、東映)を推す。青函連絡船の転覆事故と、どさくさにまぎれた殺人事件を、老刑事が10年もの歳月をかけて執念で追い続ける。
監督は内田吐夢、老刑事に伴淳三郎、若手刑事を高倉健、そして犯人を三國連太郎が演じた。
「企画から完成までを見ても、なんと撮影所の責任者が3人も代わるほど製作日程が長く、公開も延期されたほど。さらに16ミリのモノクロ映像を35ミリにブローアップ。犯罪の起点になる冬の凍てつく北海道の荒れた風景がザラザラした映像で表現され、抜群の効果を見せた。中身では、悪の権化のような主演の三國連太郎もすごいが、娼婦・左幸子の色っぽさとかわいさったらない。一夜だけ関係した三國を終生思い続け、三國から切り取ったツメで自慰行為をするシーンは、映画史上に残る」
さらに70年代に入ると、映画が斜陽産業と言われながら、興行収入を塗り替えた「日本沈没」(73年、東宝)や、映画界の風雲児となった角川春樹が参入した「犬神家の一族」(76年、角川春樹事務所)や「人間の証明」(77年、角川春樹事務所)が、潤沢な予算とともに大作主義を復活させていった──。