新装備が盛り沢山、『水陸機動団』の新編行事が報道公開

ミリタリーブログ

新装備が盛り沢山、『水陸機動団』の新編行事が報道公開

4月7日、長崎県佐世保市の相浦駐屯地において、『水陸機動団(ARDB: Amphibious Rapid Deployment Brigade)』の新編行事が報道公開された。水陸機動団は、先月27日付けで始動した「陸上自衛隊の新体制」に基づくもので、「水陸両用機能の整備」を目的に発足している。「陸上総隊」の直轄部隊となり、現在のところ2,100名での編成ではあるが、将来的には3,000名規模になることが見込まれる。

この日おこなわれた隊旗授与式では、新型の水陸戦闘装着セットにドーラン(迷彩用顔料)姿の1,500名から成る隊員が参列。山本防衛副大臣から初代団長を務めることになった青木伸一陸将補に隊旗が手渡された。

水陸機動団公式サイト:
http://www.mod.go.jp/gsdf/gcc/ardb/



山本防衛副大臣から隊旗を授与される初代団長の青木伸一陸将補。防大32期生であり、陸上自衛隊で唯一の特殊部隊として知られる「特殊作戦群」の第3代群長などを歴任している。


水陸機動団の部隊章。三種の神器の1つである「草薙の剣」は、圧倒的強さの象徴だ。陸地に刺し、領土奪回の防衛意志を表現している。金鵄(きんし) は日本建国を導いた金色の鳶であり、無血勝利の象徴。そしてクロス状に展開する黒線は、水陸機動団に関する「水」の文字を表現している。
また配色についても特色をよく反映させたものとなっている。まず「水色」は、空自による「航空作戦能力」を、青色は海自による「水上作戦能力」を、そして緑色は陸自カラーであり「陸上作戦能力」を意味している。このような配色からも、陸海空の統合によって展開する水陸両用作戦が再現されている。


こちらは水陸機動団のエンブレム。先ほどの部隊章と同様に、「草薙の剣」「金鵄(きんし)」がある他、「桜星」があしらわれている。この桜星については、日本国民の心に咲く桜花と、夜空に輝き永遠に繋がる平和の星による「愛国心」を表現しているとのこと。




新型チェストリグもお披露目となった。ファステックスは米軍準拠となるITW系で、マガジンポーチには従来通り本邦独自の規格製品であるNIFCO系バックルが使用されている。



訓練展示
式典後には、島嶼(とうしょ)の奪回を想定した訓練展示がおこなわれた。この訓練展示については、水陸機動団の隊員約220名と、沖縄に駐留する第31海兵遠征部隊(31st MEU)の海兵隊員約20名が参加している。あくまでも「訓練ではなく」「訓練展示」となる。これは、敷地面積の制限がある中で、水陸機動団の役割を大局的に表現させることを狙ったものとなる。そのため、運用面は勿論のこと、持てる装備を余すことなく紹介することは出来ないでいる。


そのことを踏まえ、今回の訓練展示においては海岸への上陸要領が省略されているが、水陸両用車(AAV-7)×10輌をはじめ、CH-47チヌーク×1機、AH-1 コブラ×1機、UH-1×1機、および海兵隊のCH-53Eスーパースタリオン×1機 などが投入され、敵陣を制圧するまでの着上陸戦闘における一連の流れがおこなわれた。



UH-1から偵察中隊の隊員が素早く降着し、偵察活動を開始。
新装備の1つである「AMH-2」ヘルメットを着用した姿も確認出来る。


AH-1コブラによる航空支援の後に、自衛隊のCH-47チヌークと海兵隊のCH-53Eスーパースタリオンが洋上から飛来。隊員はファストロープで降着し展開した。あくまでも水陸機動団の訓練展示が主題となるため、海兵隊については降着後にその場を離脱している。


偵察中隊からの情報に基づき、戦闘上陸大隊の水陸両用車が展開。敵陣に向けて制圧射撃を浴びせた。




水陸両用車の後方では、L16 81mm迫撃砲や70式地雷原爆破装置を敷設。


敵アグレッサー役の隊員は赤線入りのヘルメットを着用。


訓練展示を見守る31st MEUの隊員。CH-53が参加する中、訓練展示の指揮所前で待機していたことからも、前線航空管制(FAC: Forward Air Controler)または統合末端攻撃統制官(JTAC: Joint terminal attack controller)と考えられる。


新型の戦闘雑嚢に無反動砲の予備弾を2発ケースに入れている隊員。ナックルガードの付いた水陸用の新型グローブを使用している。




70式地雷原爆破装置が障害処理を終えると、水陸両用車が敵陣のバリケード前まで前進。後部ハッチから一斉に隊員が降車し、ハイレディで素早く展開。敵陣を制圧し、状況終了となった。

装備展示
戦闘装着セット、水陸装着セット、水路器材、装備品の展示
水陸両用作戦を主務とするため、従来の装備では対応が不十分だった。その為、水捌けや耐水・耐久性に優れたものを中心に新型が開発されている。


水路戦技要員による着用例。左から、ドライスーツ、洋上斥候、ボート乗員。


洋上斥候とボート乗員は、戦闘服の下にODカラーのウェットスーツを着用している。


ボート乗員は、膨張式救命胴衣(水陸装着セット)に連結した戦闘装着帯(戦闘装着セット)水陸一般用を着用。


洋上斥候は、戦闘弾入れ(戦闘装着セット)水陸一般用を配置した戦闘弾帯を着用。


戦闘服(戦闘装着セット)水陸一般用。
肩にはポケットが付いており、胸ポケットのフラップが通常型と異なっている。また、ズボンのポケットには上辺にゴムが入っており、本体は三つ折りのプリーツによって容量をアップ。全てのポケットの底には水抜き用のドレインホールが施されている。
ちなみに、水陸装甲用の戦闘服では、搭乗するAAV7に万一のことがあったと想定し、難燃性の高い素材が使用されているようだ。


背中上部には救出帯がレイアウトされている。


戦闘靴(戦闘装着セット)水陸一般用。排水性を重視した設計となっている。


AAV7搭乗員用のブーツ(戦闘靴 水陸装甲用)。先ほどの一般用とは違って、着脱を容易としたベルクロ仕様となっている。


戦闘装着セットに含まれる戦闘背嚢の空挺用(画像左)と水陸一般用(画像右)。共にミステリーランチ製バックパックを彷彿させるものであり、人間工学に基づいた背負い易さを追求したデザインとなっている。


新規装備となる、水陸装着セットの膨張式救命胴衣。


ヘルメットはドイツ・BUSCH製の「AMH-2」Bumpヘルメット。これについては昨年に、多国籍水陸両用演習でWAiR隊員による着用例が確認されている。


ダイブブーツおよびフィンは共にapollo製。先割れフィンによって推進力が増し、脚への負担が軽減される。


水路器材 シグナルライト(Adventure Lights VIP)


水路器材 リストコンパス(スント製SK-6コンパス)


水路器材 ダイバーナイフ(スクイーズロックナイフ)


89式5.56mm小銃、5.56mm機関銃MINIMII


60mm迫撃砲。陸自の中でも水陸機動団など極少数の部隊に対して限定的に配備されている。


84mm無反動砲(B)ことカールグスタフM3。従来のM2から軽量化が進んだもので、こちらも水陸機動団はじめ限定的に配備されており、今後リプレイスが進むものとみられる。なお、開発元のサーブ社では、最新型「M4」までラインナップしている。


訓練用のラバーガン。国産キャロット製TRG(Tactical Rubber Gun)は、過酷な訓練にも耐えられる高い耐久性を持つのは勿論のこと、隊員が実銃でのハンドリングをイメージし易いように全体の重量バランスまでも計算され尽くしている。諸外国からの注目も高い。


戦闘ラバー強襲用舟艇(CRRC: Combat Rubber-Raiding Craft)


「水路戦技要員の養成段階」を示した図


相浦駐屯地内にはプールを備えた「緊急脱出訓練場」が新設されていた。AAV-7とCH-47チヌークの搭乗部を模した着水脱出訓練装置を使用して訓練がおこなわれている。


左が水陸両用車、右がCH-47チヌークの搭乗部を模した着水脱出訓練装置。


本部前では自衛隊関係者と来賓による記念撮影がおこなわれた。米軍からは太平洋海兵隊司令官、在日陸軍副司令官、第3海兵機動展開部隊司令官のが、英国からも国防武官が招かれていた。


青木団長は記者会見で「国民の負託に応えられる部隊にしていきたい」と力強く抱負を述べている。


4月28日には、同じくここ相浦駐屯地において、設立63周年の記念行事おこなわれ一般開放が予定されている。記念式典のほか、観閲行進、戦闘訓練展示、装備品展示、試乗コーナーと共に、水陸機動団の紹介もおこなわれる。是非こちらにも足を運んでいただき、水陸機動団への理解を深めて頂ければ幸いだ。

水陸機動団公式サイト:
http://www.mod.go.jp/gsdf/gcc/ardb/


関連記事:
陸上自衛隊・西部方面隊が種子島で着上陸訓練を実施。小型偵察ボートを使った夜間訓練の公開は国内初

なお、本稿でご紹介した水陸機動団新編行事の模様は、下記ミリブロ公式FaceBookギャラリーにて掲載中。是非こちらもご覧頂きたい。



Text & Photo: 弓削島一樹
「新装備が盛り沢山、『水陸機動団』の新編行事が報道公開」のページです。デイリーニュースオンラインは、カルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
ページの先頭へ戻る