「日本のエーゲ海」2か所もあった! 本場と「牛窓」「白崎海岸」を比べてみると...

Jタウンネット

ちなみに青い屋根は正教会の礼拝堂です(hans-johnsonさん撮影, Flickrより)
ちなみに青い屋根は正教会の礼拝堂です(hans-johnsonさん撮影, Flickrより)

国内の観光地や景勝地を、国外の地域や都市に例える表現――例えば「日本のパリ」「日本のグランドキャニオン」(これらは記者が適当に思いついた例だが)といった呼び名やキャッチコピーを、見かけたことがないだろうか。最近だと、兵庫県朝来市和田山町にある「竹田城跡」が、「日本のマチュピチュ」と呼ばれていた。

こうした場所は全国に存在しており、各地に世界各国の地名や呼び名が存在する不思議な状況になっている。そのひとつが「エーゲ海」だ。

しかも、岡山県瀬戸内市牛窓町(うしまどちょう)周辺と和歌山県日高郡由良町(ゆらちょう)の白崎海岸、2か所にエーゲ海があるのだ。

多島海で日差しが強くてオリーブとか育てている

あらかじめ断っておくと、エーゲ海はギリシャとトルコに挟まれた多島海(たとうかい)で、日本列島に位置していないことは記者もわかっている。今回取り上げたいのは、あくまでも「日本のエーゲ海」だ。

一個人がどこかの海を眺めて「エーゲ海みたいだなあ」と思った、というレベルではなく、地域としてPRをしていたり、観光情報のキャッチコピーとして「日本のエーゲ海」とされている地域を対象としている。

これらの条件から探してみると、「日本のエーゲ海」として浮かび上がってくるのが岡山県の牛窓町周辺と、和歌山県由良町にある白崎海岸なのだ。両地域を見る前に、エーゲ海の特徴についてギリシャ政府が設置している研究機関、「FOUNDATION OF THE HELLENIC WORLD」のサイトを見てみよう。

「大小2500以上の島が存在する多島海」
「地中海性気候で夏季は乾燥し日差しが強く、降雨は冬季に少量」
「大理石が産出し、土壌は石灰岩」
「農業より牧畜が盛んだが、オリーブなど例外的に大規模栽培される農作物もある」
「エーゲ文明をはじめとする古代の遺跡が多い」

などが挙げられている。CMなどでよく登場する、白い壁と青い屋根の建物が並ぶ海沿いの街の風景は、エーゲ海のサントリーニ島やミコノス島だ。

ちなみに青い屋根は正教会の礼拝堂です(hans-johnsonさん撮影, Flickrより)

エーゲ海の情報を抑えたところで、まずは牛窓を見てみよう。全面的にエーゲ海を打ち出しており、牛窓町観光協会のサイト「うしまどストーリー(サブタイトルはもちろん「日本のエーゲ海」だ)」を開くと、「日本のエーゲ海・恋人の聖地...」という文字が目に入る。

恋人の聖地も気になるところ(画像は「うしまどストーリー」より)
恋人の聖地も気になるところ(画像は「うしまどストーリー」より)

瀬戸内市が開催しているマラソン大会は「日本のエーゲ海マラソン」。牛窓への移住プロジェクトでは、「『日本のエーゲ海」瀬戸内市牛窓町に定住しませんか」と呼びかけていた。

実際、地理的なエーゲ海感はかなりあるように思えなくもない。島の多い瀬戸内海に面し、瀬戸内海気候で降雨量が少なく、オリーブの栽培が盛ん(瀬戸内市と海を挟んで向かいには小豆島が位置している)なのだ。

こうした要因から、「日本のエーゲ海」となったのか、Jタウンネットが瀬戸内市に取材をしたところ、担当者は次のように答えてくれた。

「バブル期以前に、ギリシャ大使館の関係者が牛窓にあるオリーブ園を訪れたそうです。瀬戸内海の島々が一望できる場所で、『故郷のエーゲ海の景色に似ている』とコメントしたことがきっかけだったようです」

瀬戸内海も確かに多島海が広がります(fragrantriverさん撮影, Flickrより)

瀬戸内海 (Seto Inland Sea)

なんとギリシャ大使館お墨付きだった。1982年にはギリシャのミティリニ市と姉妹都市になったこともあり、牛窓町の観光PRキャッチコピーとして、「日本のエーゲ海」が使われるようになったという。

「その後は観光情報誌やメディアなどでも『日本のエーゲ海』というフレーズが使われるようになり、予想以上に浸透しました」

1996年には、西村京太郎さんの十津川警部シリーズで、『日本のエーゲ海、日本の死』という牛窓を舞台にした作品が発表されており、かなり広く浸透していたことがうかがえる。

じゃあ、白崎海岸は...

では、白崎海岸はどうだろうか。こちらに関しては牛窓ほど全面的にエーゲ海を打ち出しておらず、観光情報の一部で「日本のエーゲ海」と言う文言が登場する程度だ。また、同海岸は「新日本歩く道紀行100選」の「絶景の道」に選定されているが、ここでの登録名は「"日本のエーゲ海" 白崎海岸を望む道」となっている。

それほどエーゲ海推しではないような印象もあるのだが、実際のところどうなのか、由良町に確認をしてみたところ、担当者は

「観光協会からの提案だったとされていますが、実際に誰がどのような経緯でエーゲ海と言うことにしたのかは我々も把握できていません。ただ、牛窓よりも後であることは確かなようです」

と、若干苦笑しながら話してくれた。

とはいえ、なんとなくエーゲ海を自称しているわけでもない。白崎海岸は全国でも珍しい石灰質の岩石で構成される岬で、白い岩が並ぶ独特の景観が楽しめる。「日本の渚百選」にも選ばれており、目の前に広がる紀伊水道と合わされば、エーゲ海要素が結構あると言えなくもない。

白い岩が並ぶ海岸は確かにちょっと日本でない感がある(Ubuhouseさん撮影, Wikimedia Commonsより)
白い岩が並ぶ海岸は確かにちょっと日本でない感がある(Ubuhouseさん撮影, Wikimedia Commonsより)
「個人的には、エーゲ海に似ているというよりは、日本ではないような珍しい雰囲気の海岸というニュアンスで、『日本のエーゲ海』だと考えています。観光協会のポスターでも、海岸をバックに『ここは日本?』というキャッチコピーを配し、異国情緒をアピールしており、エーゲ海に限らず外国のような風景として楽しんでいただきたいですね」
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