独身の高齢者がペットを飼うことのリスクとその対策を解説

心に残る家族葬

独身の高齢者がペットを飼うことのリスクとその対策を解説

ご高齢の方と高齢の犬がゆっくりゆっくり散歩をしているのを見ると、長い人生を共に歩んできた姿そのもののような気がして、いつも私は心が和む。しかしこれは実は警鐘を鳴らすべき事態なのである。なにが大変なのか。それは飼い主が先に亡くなったらどうなるのかということだ。これは高齢者には限らない。若くとも一人暮らしの方には同じことが言える。人間はいつ亡くなるのかわからないのだ。飼い主が亡くなった後、残されたペットは誰に引き取られるのか。誰がその飼育に掛かる費用を負担するのか。調べてみると、ペットたちは飼われ始めた瞬間から、命を飼い主に預けているということがよくわかってくる。

■ペット(愛玩動物)からコンパニオンアニマル(伴侶動物)へ

近年ペットは愛玩動物というだけではなく、家族の一員としての地位を確固としている。そのため、「ペット(愛玩動物)」ではなく、「コンパニオンアニマル(伴侶動物)」という呼び方に変えようという動きすらある。

猫は散歩の必要がないという気軽さから、ここ数年飼育頭数が激増している。ウサギやハムスターなどの小動物も値段が手ごろであり、子供でも飼育しやすく、定着したペットである。お祭りに行き、金魚すくいを子供にねだられたことをきっかけに金魚を飼い始めた経験のある方も多いだろう。これもまた大事なペットの一員だ。こうしてみると、誰しも一度はペットを飼った経験があるのではないだろうか。

日本でのペットの始まりは旧石器時代に遡る。神奈川県夏島貝塚には人間と一緒に丁寧に埋葬されている犬の骨が発見されている。およそ9000年前のものだ。平安時代は貴族が猫を飼うことが流行し、戦国時代はポルトガル船来航により、ポインターやグレイハウンドなどの大型の洋犬が輸入された。江戸時代に流行ったのは金魚である。また、明治時代、うさぎが大流行し、うさぎ税なるものが義務付けられた。このように、いつの時代も日本人は動物に夢中だったのだ。ちなみに総理府が行った「動物保護に関する世論調査」によると現在、日本人の約35%が動物を飼育しているという。

■独身の高齢者が犬を飼うということ

では、日本で一番古くからペットとして飼われてきた犬について取り上げてみよう。
かつては日本人のペットの六割を占めたといわれる犬。現在、飼いやすさから人気犬種ランキングの八割は小型犬が占めている。小型犬は散歩も手軽で室内でも気軽に飼える。もちろんトイレも覚えてくれるし、トリミング代も安い。しかし小型犬は大型犬と比べてずっと長寿であることはご存じだろうか。

チワワの寿命は約15歳だが、ラブラドールレトリバーの寿命は約12歳、グレートデンになるとわずか約8歳だ。これは小型犬のほうが管理しやすいということも一例に挙げられる。大型犬にとって日本の家の敷地は狭く、十分な運動をさせにくい。また食事量も多く、健康管理をし辛い。大型犬は臓器の大きさが体に対して小さすぎるため、体の隅々まで酸素や栄養素が行きわたらないという説もある。

長く連れ添ったご主人を亡くし、一人暮らしになった高齢女性に小型犬を飼うことを勧める。確かに精神的に立ち直るためには効果は抜群だ。しかしその犬も歳を取ることを忘れてはいけない。犬も高齢になると介護を必要とするのである。

例えば犬用おむつは人間用に比べて高額だ。病院の医療費ももちろん保険が適用されるわけではない。最近ではペット保険も多く見るが、値段が高いため浸透していないのが現状だ。犬が介護を必要とする十年後、飼い主もまた同じだけ歳を取っている。これでは老老介護である。

■飼い主亡き後のペットはどうなる?どうするべき?

もしペットを残して飼い主が死んでしまったらどうなるか。孤独死した飼い主と一緒に餓死してしまうケースも多い。保護された場合はボランティア団体で引き取り手を探してくれるが、見つからなければ殺処分となる。引き取り手もまた、若い動物を選びがちだ。介護の必要になった高齢犬の引き取り手は、なかなか見つかるものではない。

ではどうしたらいいか。まずは遺言書である。ペットに財産を相続させることは不可能だが、ペットの面倒を見てもらいたい相手に遺産を残す、または遺産の管理を頼むことは可能だ。

まずは「負担付遺贈」からみてみよう。これは「A氏に○円遺すので、ペットの世話を最期まで見てください」という文言を遺言という形で残すことだ。しかし、この場合受遺者は必ず受けなければならないわけではない。ここで確実に面倒を見てもらいたいのであれば、「負担付死因贈与契約」というものをおすすめする。この場合は合意による契約なので放棄される心配はない。遺言書はきちんと公証人に作成してもらうと確実である。ただし相手の合意を得られなければもちろん作ることはできない。

次に老犬ホームや猫ホームがある。老犬・猫ホームは介護が必要な犬や猫の世話をしてくれるところである。また、病気になって世話ができなくなったり、引っ越しなどの理由で飼育できなくなったペットを引き受けてもくれる。

面倒な手続きを踏む必要がないので、金銭的に余裕があるのなら選択肢のひとつであるが、これには業者を見極める目が必要だ。すでに悪質な業者による詐欺や虐待も起きている。自分の死後、きちんと面倒を見てもらえているかはわからない。自分が介護施設を利用する際はペットも一緒に受け入れてくれる老人ホームもあるので探してみるといい。しかしこれもまた金銭的に余裕がなければできないし、死後はやはり誰かに頼むことになるだろう。

■ペットを飼うということ

飼い主を失ったペットもまた深い傷を受ける。信頼関係の強い飼い主との突然の別れは特に犬には深い喪失感を与える。犬は群れで生きる習性があるので飼い主をリーダーとしている。突然そのリーダーを失うと犬は従う相手がわからなくなり、混乱する。強い信頼関係で結ばれた飼い主であるほどストレスは大きい。食事ものどを通らなくなることもある。犬が「死」を完全に理解しているかどうかはわかっていないが、緊急事態が起こっていることはよくわかる。

遺体から離れようとせず、顔をなめて起こそうとしたり、悲しそうに泣いたりするという話はよく聞く。絶食して後追い死することすらある。ペットにとっても人間はやはり大切な家族なのだ。ペットを飼う一人暮らしのひとは突然の自分の死に対するペットのための予防策が必要だ。自分が死んだ後もわが子の様に可愛がってきたペットの将来を考えてあげてほしい。ペットたちは正に生殺与奪の権を飼い主に委ねているのである。

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