天命を全うし、自然に帰っていく。年老いてやせこけた一頭のオスライオンが最期を迎える時 (2/4ページ)

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 カメラを向けながらその体に違和感を感じた。望遠レンズで確認すると片足が妙な角度に曲がっていることに気づいた。

 その後、水を飲み終えて辛そうに立ち上がったライオンの全身を見たとき、思わず息をのんだ。そのオスは年老いており、骨と皮しかなかったのだ。・ゾウにみつかり息も絶え絶えに木陰へ
 やせ衰えたライオンは息も絶え絶えの状態で、一歩ずつ水場から遠ざかると、ほんのわずか離れた地面に倒れるように座り込んだ。最期の時間を迎えているのが明らかだった。

 するとゾウの群れが水場に来て喉をうるおし始めた。そのうち体の大きな1頭が周りを歩き、草むらに横たわる老ライオンを発見した。

 驚いたゾウは耳をばたつかせて足を踏み鳴らし、仲間に危険を知らせるように大きな鳴き声を上げた。

 だが、命が尽き欠けているライオンは咆哮もできず、よろよろとその場を離れて木陰に横たわった。・百獣の王の最期
 ライオンから目が離せなくなった2人は車でそこに向かい、2mを切るほどまで近づくと、共にカメラを下に降ろしてひたすら見守った。

 パンネルは、たった1頭で寿命を終えるライオンを置き去りするのが忍びなくなり、彼を看取りたい気持ちでいっぱいだった。

 そしてとうとう最期の時が訪れた。苦しそうだったライオンの呼吸が止まった。目の前の百獣の王は静かにこの世を去った。・このライオンの死を忘れない
 フォトジャーナリストのパンネルはこれまで自然災害ですべてを失くした人、負傷した人や死にゆく人々も撮影してきた。それは悲しみを伴うものばかりだったが、この時は違った。

 威厳あるライオンが死に至った時、悲しいという感情よりも、その瞬間に立ち会えた稀有な体験を決して忘れないという強い意志が芽生えたという。

 後に知った話では、このライオンはスカイベッド・スカーという名で、長年にわたりこの場所を治めていたそうだ。彼は自由に生き、自由に死んだ。
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