「どうなる」も「どうなりたい」も考えたことがなかった 町田康インタビュー(3) (2/2ページ)
――バンドマンから俳優、そして小説家と、これまで様々な活動をされてきた町田さんですが、若い頃「こうなりたい」とか「こんなことをやりたい」といったビジョンを持っていましたか?
町田:ビジョンと呼べるものはなかったですね……。その都度おもしろそうなことをやって、全部出たとこ勝負でした。「どうなる」とか「どうなりたい」とかは考えたこともなかったですし、それは今もそうです。

町田:単純に一つのことを20年やっていれば、多少は色々なことがわかってくるというのはあります。だいぶ思っていることに近いことができるようになってきましたし。
――昔は思ったことをうまく表現できないことが多かったんですか?町田:当時は文章を書いて何か表現するというのではなく、書くこと自体が目的でしたからね。
実は今もそういうところがまだありまして、書いている時の自分の精神状態に意味があるのであって、書いたものがおもしろいかどうかは次の段階の話だと思っています。ただ、経験を積んだことで、「書いている時の精神状態」と、読んでくれた人の反応も含めた「書いたものがおもしろいかどうか」の関係性が見えてきたというのはありますね。
書き始めた頃は、その関係がわからないまま「おもしろいと思うんだけど、果たしてこのまま書き進めてもいいんだろうか」とか「小説を書けと言われて書いたが、果たしてこれは小説になっているんだろうか」と考えることがよくありました。
――町田さんが人生で影響を受けた本がありましたら、3冊ほどご紹介いただきたいです。町田:筒井康隆「脱走と追跡のサンバ」、勢いと脈絡のなさに魅力を感じて何度も読みました。大江健三郎「日常生活の冒険」文章そのものの硬質な雰囲気とにもかかわらず溢れる情緒。狂おしい人間の感情に魅了されました。木津川計「大阪の笑い」東京で暮らし始めたときに読み、自分の根底にある大阪の笑いについて学びました。その他にも多くの本から影響を受けています。
――最後になりますが、町田さんの本の読者の方々にメッセージをお願いいたします。町田:今回の本は、人間の本音に迫りました。頭では思っていても普通は口には出さないよということをあえて書いた、建前を外した世界を楽しんでもらえたらうれしいです。
(インタビュー・文/山田洋介、撮影/金井元貴)