「どうなる」も「どうなりたい」も考えたことがなかった 町田康インタビュー(3) (1/2ページ)

新刊JP

『湖畔の愛』の著者・町田康さん
『湖畔の愛』の著者・町田康さん

出版業界の最重要人物にフォーカスする「ベストセラーズインタビュー」。

第99回となる今回は、新刊『湖畔の愛』(新潮社刊)を刊行した町田康さんです。
『湖畔の愛』は、龍神が棲むという湖「九界湖」のほとりにある老舗ホテルを舞台に繰り広げられる、恋あり笑いあり涙ありのドラマを書いた短編集。アクの強すぎる登場人物たちと、どんなにシリアスな場面でもどこかとぼけた会話がクセになります。

今回はこの作品の成り立ちについて、そして町田さんのルーツといえるパンクロックと音楽について、たっぷりと語っていただきました。その最終回をお届けします。
(インタビュー・文/山田洋介、写真/金井元貴)

■「どうなる」とか「どうなりたい」とかは考えたこともなかった ――最近では、音楽や演劇など他分野の方が小説を発表して話題になることが珍しくなくなってきていますが、町田さんはその先駆けの一人です。ミュージシャンとしてデビューして、その後俳優としても活動されていましたが、小説を書いてみようと思ったのはなぜだったのでしょうか。

町田:もともと文章で何かを表現するのが好きだったんです。音と文章ということでいうと、音は好きだし歌うのも好きなんですけど、やれることの多さという意味で文章の方に可能性を感じていたというのがあります。

音楽というのはある種の制約で、何か文章的なアイデアを思いついても「メロディに乗らない」とか「リズムに乗らない」ということがありえます。あるいは、凝った表現をしても視覚情報がないから伝わりにくいこともある。

そういう制約が全然ないところで文章だけを自由に書いていいというのは魅力的でした。実際やってみたらすごく楽しかったので、それから10年くらいは文章に専念しました。

――歌詞という表現方法に制約を感じていた。

町田:制約といえば制約ですが、歌詞というのはそういうものですからね。だから制約があるから不自由だとか嫌だとか思っていたわけではないです。

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