【医師が解説】 人気声優もかかった「急性散在性脳脊髄炎」ってどんな病気?
先日、人気声優の梅原裕一郎さんが「急性散在性脳脊髄炎」のため療養することになったというニュースがありました。*
聞き慣れない病名のため、不安になられた方も多いのではないでしょうか。そこで、どんな疾患なのか、治療法や後遺症はあるのか、また早期発見のためにはどうしたらよいかなど、医師の武井智昭先生に解説していただきました。
急性散在性脳脊髄炎とは?

症状
急性散在性脳脊髄炎の症状としては、初期には発熱・頭痛・吐き気・嘔吐など、胃腸炎に似た症状が見られます。
その後、急激に手足のまひ・ろれつが回らない・歩けない・目が見えにくくなるなどの神経の症状が短期間のうちに現れます。症状が重症化すると意識障害を起こし、最悪の場合は死亡する可能性もある疾患です。
原因
まず、この疾患の原因として明らかとなっているものはありません。
しかし、ウイルスに感染した後やワクチンを接種した後に、脳の白質にある髄鞘に対しての自己免疫反応(自己の組織を異物として攻撃してしまう反応)が起こることが主な原因ではないかと考えられています。
このため、ウイルスが原因となるインフルエンザウイルス・麻疹ウイルス・おたふくかぜなどの感染後には注意が必要とされています。
一方、ワクチン接種による急性散在性脳脊髄炎のリスクは200~300万回に1回程度と頻度はまれです。ワクチンが原因とされているものとしては、B型肝炎ワクチン・日本脳炎ワクチンとの関連が示唆されています。
診断
急性散在性脳脊髄炎の診断は、前述の症状・経過による判断に合わせて、頭部のCT/MRIと髄液検査の結果をもとに判断します。
頭部CTでは脳実質よりも黒く写る部分が見えたり、MRIではT2という撮影方法を使うと、この病気となっている部分が広い高信号領域として白く写って見えます。
髄液検査では、この病気になっていると髄液中の白血球数の増加、特にリンパ球の増加が見られ、ミエリン塩基性タンパクとよばれる物質の増加や、オリゴクローナルIgGと呼称されるパターンが特徴的です。
また、感染症の可能性があるので原因の微生物を推定するために、髄液での遺伝子検査(PCR法)も行われることがあります。
治療法
治療は、自己免疫反応を安定させるためにステロイド大量投与や免疫グロブリン大量投与、免疫抑制剤投与などが検討されます。
さらに、呼吸状態が悪化した場合には人工呼吸管理を行い、痙攣(けいれん)があれば抗てんかん薬の投与などが症状に応じて実施されます。
後遺症
成人の発症の場合、急性散在性脳脊髄炎の後遺症が残る割合は40~50%程度です。
小児の場合では、後遺症がない場合が多く60%程度では改善が報告されていますが、長期的に見ると計算能力・行動異常・視覚の認知機能の低下などが示唆されています。
かかりやすいのはどんな人?

急性散在性脳脊髄炎は若い方に多くみられる疾患です。
とくに、感染症後での発症は小児に、原因がわからない特発性のものは若年成人に多くみられます。この疾患の頻度は低いので明らかな男女比は明らかにはなっていません。
早期発見するには?
急性散在性脳脊髄炎が疑われる症状として、ワクチン接種や風邪にかかった後の1~4週間後に、発熱・頭痛・嘔吐から始まり、意識がはっきりしない、手足が動きにくい、歩きにくい、麻痺があるという神経の症状が見られた場合は、すみやかに医療機関を受診してください。
最後に武井先生から一言

急性散在性脳脊髄炎の原因は明確ではないものの、自己免疫のしくみにあるのではないかとされており、適切な診断と早期治療が有用です。
よくある疾患というものではありませんが、早期発見するためにはワクチン接種後や風邪にかかった後、神経症状が出ていないかチェックするとよいでしょう。
参考
【監修:医師 武井 智昭】
プロフィール)
慶応義塾大学医学部で小児科研修を修了したのち、 東京都・神奈川県内での地域中核病院・クリニックを経て、現在、なごみクリニック院長。
0歳のお産から100歳までの1世紀を診療するプライマリケア医師。