【小説】国芳になる日まで 〜吉原花魁と歌川国芳の恋〜第8話 (2/4ページ)
「そりゃあ、わっちゃア、大好きだ」
国芳は顔を真っ赤にしてそう言った後、にっと明るく笑った。
「そっか」
みつは溜息のような声を鼻から出した。
「あたしはこの目、嫌いなの」
「なんでだ?誰より綺麗な目だぜ」
「そうかしら。・・・・・・」
みつが口をつぐみ、この話はそれで終わるはずだった。しかしまた、女はくちびるを開いた。
「ねえ、国芳はん」、
「ん?どうした?」
国芳が見ると、みつは何か思い詰めたような意を決したような表情で、脇に寄せた絵を引き寄せた。
「この絵の海は、どんな色をしているの?こっちの船は?この空は?」
画像:国芳「平知盛亡霊と弁慶(部分)」ボストン美術館蔵
この女は何を言っているのだろう、と国芳は思った。咄嗟には理解ができなかった。
「ねえ、国芳はん」、
みつの目にみるみる大きな水鞠が膨れ上がり、そして、ぽたりと真下に落ちた。
「たんぽぽは、どんな色なの」。
国芳は胸を衝かれた。
「・・・・・・見えねえ、のか?」
国芳は驚きに身を起こし、みつの肩を掴んで面詰した。
