アメリカのほぼ全州で自殺率が上昇。最大で57.6%も
アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の報告書によると、ここ数年、アメリカのほぼすべての州で自殺が増えているという。
アメリカ全50州のうち、1999~2016年にかけて自殺率が上昇したのは49州。平均すると25%の上昇で、そのうち25州では30%以上も上がっている。
2016年には全体でおよそ45000人が自殺で亡くなった。この数字は、その年の殺人による死者の2倍以上である。
・アメリカで増加の一途をたどる自殺率
アメリカでは自殺は10番めの死因で、主要な死因の中で増加した3つのうちの1つだ。
報告書によれば、2014~2016年の自殺率は地域によってかなりばらつきがある。ワシントンDCでは年に10万人に7人が自殺しているが、モンタナ州では10万人に29人の割合となる。
調査期間において、自殺率はほぼ全州で上昇しているが、デラウェア州の5.9%増からノースダコタ州の57.6%まで差異がある。減少した唯一の州はネバダ州で1%低下した。ただし、同州はもともと自殺する人の数は多い。
アメリカの自殺率の増加を示したMAP(1999年 - 2016年)。ネバダ州をのぞく全州で自殺率が上昇。平均すると25%の上昇となり、ノースダコタ州が最大で57.6%上昇。image credit:cdc
・自殺の要因は複合的
「自殺は、家族はもちろん、コミュニティ全体にとって悲劇」とCDCの主任副所長アン・シュチャット博士は声明で述べる。
「個人やコミュニティ、従業員や医療の専門家まで、一丸となって人命を救い、懸念される自殺の上昇を逆転させるべく努力しなくてはなりません」
自殺はしばしば精神疾患のみと関連付けられるが、原因が1つしかないという状況は珍しいと研究者は言う。
事実、報告書は、自殺で亡くなった半数以上の人が、死亡の時点で精神疾患があるとは診断されていないことを明かしている。
それ以外の原因としては、人間関係のトラブル、薬物の使用、経済苦や仕事のストレスなどが挙げられる。
・メンタルケアの充実と自殺のサインを見抜く
それでもシュチャット博士は、心の状態をきちんと認識し、メンタルヘルスの治療を利用しやすくすることが、自殺の予防において重要であると強調する。
一方で「この問題を精神疾患の問題としてのみ見るなら、進展は望めないでしょう」とも発言する。
自殺の防止には、自殺へ至る恐れがある危険サインや状況を知り、それが認められればその人を救う機会として行動することが大切だという。
全米自殺予防ライフライン(National Suicide Prevention Lifeline)によれば、自殺の危険サインには、「絶望感、閉塞感、他人の荷物になっているといった話をする」「死にたいとこぼす」「薬物やアルコール摂取の増加」「不安に駆られた行動や無謀な振る舞い」「人に会わなくなる」「極端な気分の変化」などがある。
・自殺者をどう防ぐか?
自殺防止には社会の全セクターの協力が必要だ。
例えば、州なら経済や住居の問題を抱える人たちに一時的な支援を拡充する施策をとり、医療機関なら、医療サービスを利用できない場所に電話やオンラインでの相談窓口を作る。コミュニティでも、人々をつなぎ孤独感を癒すプログラムやイベントなどを開催するなど、全方向からの支援が必要となる。
また一人一人が自殺の危険サインを知り、それに対応する方法を学ぶことも大切だろう。
References:cdc / livescience
日本の場合、厚生労働省が発表した2017年版の自殺対策白書によると、人口10万人当たりの自殺者数を示す自殺死亡率は世界で6番目に高かったという。特に若年層は深刻で、先進7カ国と比較した場合、自殺が事故を上回ったのは日本だけだった。
また、20歳から39歳の死亡要因の第一位が自殺となっている。
(厚生労働省:年齢別、性別による死因順位)