地球上異世界探訪。火星の環境に似ている6つの魅惑の場所
人類はいつの日か、火星に住むことができるのだろうか?
平均気温26℃前後の地球に比べて火星はかなり低温である上に、呼吸に必要な酸素がない。他にも住むには障害となることが様々ある。
しかし、科学者たちは人類の火星移住を可能にする新たな方法を模索している。将来的には火星を温めて、人間が酸素を吸えるような大気を作り出すといったことが可能になるかもしれないのだ。
いつか来るかもしれないその日に備えて、まずは地球上にある、火星環境によく似た場所に行き、疑似体験を得るのも良いかもしれない。
・ヴォストーク湖(南極大陸)
地球上で最大の氷河下湖のひとつ。東南極大陸の南極点近くにあり、長さ230キロ、幅50キロ、水深792メートル以上。氷河の3.2キロ以上下に埋没していて、ロシアのヴォストーク研究基地近くにある。
湖は少なくともおよそ1500万年前から氷に覆われていたと考えられ、光がささず、大気も遮断され、地球でもっとも過酷な環境のひとつになった。
1960年代、ロシアの地理学者兼パイロットが、氷原にほかとは違う滑らかな氷の部分があるのを上空から見つけて、初めて埋もれた湖に気がついた。
1996年、イギリスとロシアの研究者たちが、まさにその場所に湖が埋もれているのを確認した。湖ができた年代はわからなかったが、研究者たちは数千年と見積もっている。
この場所の平均気温は、マイナス26℃前後だが、湖そのものはマイナス2.7℃だという。これは氷の分厚い重みが上にかぶさっているせいだ。
また、湖の真水のおかげで、暗く極寒の中でも生物が生きているのではないかという。実際、湖には微生物や多細胞生物がいることがわかっている。このことから、似たような火星の極端な環境でも、生命体が見つかる希望があると言える。
・ドライバレー(南極大陸)
南極、マクマード湾の西にある永久凍土の谷の連なりだ。火星の北の環境にとてもよく似ていると言われている。
水が氷になり、栄養分がほとんどない氷点下でも、微生物が見つかっている。栄養分がほとんどないこうした環境で生きている生物はゆっくりと成長するため、火星で生命が存在する可能性を解き明かす助けになるかもしれない。
火星の北極は、何億年も昔にはもっとたくさんの太陽光が当たっていたため、かつては生命が育まれていたのかもしれないという。つまり、水の存在、そしてもちろん生物がいた可能性があるということだ。
そこで、研究者たちは、南極大陸のこの場所に穴をあけてみて、火星の北で掘削に使う機械はどれが一番いいのかを決めようとしている。火星の北極で氷の層を覆っている土壌面が見つかっているが、その環境がドライバレーに酷似していることが、ここで掘削調査が行われる理由だ。
・アタカマ砂漠(チリ)
およそ1000キロにもわたる高原で、極度に乾燥している。地球上でもっとも火星に似た環境のひとつだ。
降雨があるのは数十年に一度という極端な乾燥地帯。このため2004年に、NASAが資金提供して、研究者たちがこの砂漠で4週間過ごし、火星で生物が生きられる可能性を調査した。ここでの発見は、驚くべきものだった。
乾燥した砂漠のど真ん中に微生物がいたのだ。誰もが生物は生きられないと思っているアカタマ砂漠のような非常に乾燥した場所で生き物が見つかるのなら、火星になにかがいてもおかしくない。
ワシントン州立大学の惑星学者は、地球でもっとも乾燥した環境に生物がいるなら、似たような火星の環境に生命が耐えられる可能性は十分あると言っている。
・オリサバ山(メキシコ)
メキシコ南部中央にある火山。メキシコ高原の南端にそびえたち、プエブラの東96キロ付近に位置する。1687年以降、火山活動は休止しているが、標高5610メートルの北米第三位の山だ。
火星移住の可能性への大きな課題は、どうやって人間が住めるようにするかということだ。そのため、研究者たちはこのオリサバ山にとても興味を示している。
ここは、3900メートルという地上でもっとも高い森林限界があり、研究者はこの場所を活用して火星で生活できるかを探ろうとしている。
温室効果ガスを使って、気圧を上げて光合成を起こし、火星の気温を上昇させることができれば、酸素を必要とする人間やほかの生物に不可欠な大気を作り出し維持することができる可能性があるという。
こうしたガスを使って火星の気温を5℃まで上げることができれば、オリサバ火山の森林限界の気温と同じになる。
・デスバレー(カリフォルニア)
研究者たちは何十年もデスバレーで広範な研究や試験を行ってきた。それは、ここが古代の岩の層になっているからだ。
NASAの火星探索船キュリオシティも、火星の過酷な大地での操作性を試すために、ここで試験をした。
デスバレーは、カリフォリニアの南東に位置し、北米でももっとも標高が低く、乾燥して、暑い場所。全長およそ225キロ、幅8~24キロ。火星よりも暑いが、ごつごつした岩の大地が火星とよく似ているという。
2012年以降、ここでは毎年一回、マースフェストというイベントが行われている。
科学者や技術者が一般市民とともに、火星とデスバレーの共通点について話し合う。火山岩に覆われたマースヒルを訪ねることができ、メスキート・フラット砂丘、ユーベヘーベ・クレーター火山地帯、リトル・ヘーベ・クレーターなどを歩くことができる。
・デヴォン島(北極海)
世界最大の無人島。有人無人問わず、あらゆる島の中で27番目に大きな島だ。
カナダのヌナヴート準州パリー諸島という群島の一部。北極海のエルズミア島南とバフィン湾西に
位置する。長さおよそ515キロ、幅128~160キロ、面積5万4390平方キロメートル。
1616年にウィリアム・バフィンによって発見されたこの島には、ホートン・クレーターという直径22キロの巨大なクレーターがある。およそ3900万年前に、直径2キロの隕石が衝突してできたという。
衝突エリアは寒冷で、乾燥していて、風が強く、かすんでいる。とくに浮石など、火星の多くのクレーターと状態がよく似ている。
デヴォン島の平均気温はマイナス17℃、火星はマイナス24℃で、とてもよく似た環といえる。
SETI(地球外知的生命体探査プロジェクト)の惑星学者パスカル・リーは、NASAのホートン・マース・プロジェクト(HMP)を主導している。ここでは、ホートン・クレーターを使って、人類やロボットが火星を探索するための準備に役立つと期待される、新たな技術や戦略の調査を行っている。
1997年以降、毎夏、リーは隔絶されたデヴォン島で、宇宙服やロボット、掘削機などの多くの試験をして、火星への旅に役立てるためのさまざまな研究を行っている。
References:Fascinating Mars-Like Places on Earth - Toptenz.net/ written by konohazuku / edited by parumo