天下の猛妻 -秘録・総理夫人伝- 森喜朗・智恵子夫人(下) (2/2ページ)

週刊実話

私は主人の着替えくらいは持って公邸には行きますが、主人には単身赴任してもらいます』と。
 結局、森は単身赴任をよぎなくされ、秘書がパンと牛乳を買って来ての食事など、かなりミジメな日々を送った。よく報じられた『夜な夜なの総理の料亭通い』も、ここで足らない分の“栄養補給”をやっていたとの見方もあったのです。この頃の森は、政権低迷と“栄養不足”が手伝ってか、100キロを超えていた体重も激減、ワイシャツの襟がダブダブだったことはあまり知られていない」

 「『神の国』に始まっての夫の失言が続く中、たった一度だけ夫人がキレてこう言ったそうだ。『あなたは総理大臣なんだから、もう自分を売り込んだりする必要はないじゃない。国民の皆さんには、情熱を込めて政策を語りかければいいんじゃないかしら。もう顔も見たくないから出て行ってよッ』と。さすがに森も、『僕を誰だと思っているんだ。あなたの息子じゃないんだぞッ』と切り返しての“危機一髪”もあった」

 そしての、いよいよの退陣が決まった直後、智恵子夫人は親しい森派議員の夫人にこう言ったそうである。
 「やっと終わるわ。これでせいせいする。終わったらパーティーでもやりましょうよ」と。

 そのうえで、森家の内情に通じていた政治部記者が、夫妻の次のような「横顔」を明かしている。
 「智恵子夫人を知る人は、一様に『代議士の妻の見本』と言います。分をわきまえ、万事に控えめだが、芯はしっかりしていて外国の要人と会っても物怖じすることもない。一方で、森の石川県の選挙区もきっちり守っている。『夫・命』が、夫人の徹底した森への姿勢でした。
 一方、森にもこんな秘話がある。じつは、森は毎日1回は必ず夫人に電話をかけている。とくに用事がなくても、『今日も無事に生きていたからね』とか、『家にいたんだね』といった具合。一見、ぶっきら棒に見える森だが、なかなか神経のこまやかな愛妻家、ラブラブ夫妻なんです」

 退陣した森は、その後、小泉純一郎首相のあと安倍晋三が政権に就いたのを機に、それまでの森派の会長のイスも下り政治家は引退した。しかし、“生臭さ”を捨て切れないのは政治家の常である。いま、2020年の東京オリンピック・パラリンピック組織委員会会長として、“政治的にらみ”を利かしている。
 好きなラグビーのボールのリバウンドが、どこへ転がるか分からぬことを人生の行方に例える森だが、この先どう転がるかは、もとより森自身も分かっていない。=敬称略=
(次号は、小泉純一郎・佳代子元夫人)

小林吉弥(こばやしきちや)
早大卒。永田町取材48年余のベテラン政治評論家。抜群の政局・選挙分析で定評がある。著書に『決定版 田中角栄名語録』(セブン&アイ出版)、『21世紀リーダー候補の真贋』(読売新聞社)など多数。

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