ちょっと笑えるワカメ事件?枕草子のやりとりを探る:歌人で美男子 藤原斉信 編 (2/2ページ)
斉信が則光のところにやってきて、「(夫であるから)いもうと(ここでは清少納言のこと※一般には姉か妹のことだが、夫婦関係のような曖昧な立場を義兄妹のように称したとされる)の居場所を知っているだろう。言いなさい」としつこく迫ったのだといいます。
長く宮中から退出していた清少納言がいないのが寂しかったのでしょうか。二人がお互い教養を持つ親しい友人として付き合っているにしても、ちょっと斉信は清少納言を気にしすぎているようにも感じられるエピソード。
宮中で気の利いたやりとりができる相手がいないことが寂しいのか、はたまた「あなたに気がありますよ」というアピールなのか……。
夫・則光との関係も見えた「ワカメ事件」斉信はあまりにもしつこく居場所を尋ねたので、知らないと嘘をついている則光は笑いそうになって、台盤の上にあったワカメをつかんで口につっこみ、無理やり食べることでごまかしたのだ、といいます。
その場はそれでやりすごしたといいますが、後日、則光から文が届きます。
宰相の中将、御物忌に籠りたまへり。「いもうとのあり所申せ、いもうとのあり所申せ」と責めらるるに、ずちなし。さらにえ隠し申すまじ。さなむとや聞かせたてまつるべき。いかに。仰せにしたがはむ」
「枕草子」(校注・訳:松尾聰・永井和子「新編日本古典文学全集」/小学館より)
「また斉信がしつこく居場所を聞くので教えてもいいですか?もう隠し通せません」という内容です。
清少納言はこの返事として、文は書かずに海藻(わかめなど)を紙に包んで使者に渡したのです。要するに「そのまま黙ってなさい」という意味で贈ったものなのですが、これは則光には通じませんでした。
「妙なものを送って、何か行き違いがあったのか」という則光に、清少納言は和歌を贈ります。もともと和歌嫌いであったらしい則光とは、その後関係も悪化したんだとか。
機知にとんだ清少納言の返しに気付くこともできない則光。離婚の原因もうかがえるエピソードです。
このまま冷え切った関係のままだったかというとそんなこともなく、離婚後も友人としてやりとりはあったそうです。
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