西日本豪雨でクローズアップ、日の丸自衛隊「大活躍の理由」

日刊大衆

西日本豪雨でクローズアップ、日の丸自衛隊「大活躍の理由」

 7月5日頃から西日本を襲った豪雨は、死者204人、行方不明者62人(7月13日午前)という平成で最悪の被害をもたらした。

 先月6月18日には、震度6弱の「大阪府北部地震」も発生しており、不幸にして大規模災害が重なるかたちとなってしまった。

 豪雨と地震、2つの被災地には、迷彩服に身を包んだ自衛隊員たちの姿があった。自衛隊の年間の災害派遣出動件数の平均は500〜600件と非常に多い。1日1件以上は必ず出動している計算だ。

 16年度の防衛省発表の最新データで見てみると、年間出動件数は515件。最も多いのが急患輸送となり409件で、山火事などの消火支援が57件。

 こうした状況から、最近では、「自衛隊に救助専門部隊を設置するべき」とか、「1000億円以上をかけ、ミサイル防衛用のイージスアショアを導入するなら、救助用の装備を購入せよ」と言った意見も聞かれるようになった。中には、「被災現場で迷彩服は威圧的過ぎるので、災害派遣用の服を作れ」というものまである。

 自衛隊の本来任務のうち「主たる任務」として明記されているのは、侵略国から日本国民を守る防衛出動である。一方、本来任務ではあるものの、「従たる任務」として位置づけられているのが災害派遣だ。ただし、必要に応じて行う任務とはいえ、災害派遣も立派な本来任務であるため、救助用の装備を拡充すべきだとする意見をするのは的外れではない。ではなぜ、自衛隊はかくも頼られるのか。

 その最大の理由は、「自己完結型組織」である点だ。自衛隊は、弾薬や燃料の補給など戦闘に関わる支援は当然のこと、自衛隊員のための水や食料まで、すべて自力でまかなえる。実は災害派遣は、こうした能力を応用しているに過ぎない。

 そのため、災害派遣時に、給水・給食・入浴などの被災者の生活支援全般を担うことができる。道路や水道・電気・ガスが寸断された際も、自治体や民間ボランティアは生活支援ができず、警察や消防も必要な資機材を持っていないため、自衛隊にしかできないのだ。
 
 ただし、自衛隊はシビリアンコントロール(文民統制)の原則から、災害が発生したとしても勝手に出動することはできない。必ず、都道府県知事などからの要請が必要となる。だが、災害派遣要請が出てから準備したのでは迅速な支援は不可能であるため、「自主派遣」というかたちで情報収集を行い、備えている。

 大阪府北部地震の際は、地震発生2分後には、防衛省内に災害対策本部が設置され、発生20分以内には、各種ヘリに加え戦闘機も飛び立ち、上空から偵察飛行を行っている。こうして準備を着々と進め、12時に大阪府知事から第3師団長に対して出動要請が出たと同時に、伊丹駐屯地などから給水車が飛び出していった。

 それでもまだ、自治体と自衛隊との連携は不十分な部分があるため、現在、平素からの連携強化を目指し、退職自衛官を各自治体に防災担当者として配置する動きがある。すでに、全国の自治体で402名(17年3月末現在)の退職自衛官が働いているが、彼らがいざという時の〝パイプ役〞となる。

 平素より自己完結型組織として他国の侵略に備えている自衛隊だからこそ、災害派遣で真価を発揮できるのだ。(軍事フォトジャーナリスト/菊池雅之)

 現在発売中の『週刊大衆』7月30日号では、この他に、オウム真理教が残した“最大の謎”「国松長官狙撃事件」の真相などをワイド特集として報じている。

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