イギリスに住むロス・ロヘロ - ブールジュさんは、現在30歳の成功したサウンドエンジニアだ。少年時代からミュージシャンになりたかった彼は、楽器だけを車に詰め込んで、全英を回りながら音楽活動を続けていき、やっとその夢を叶えることができたのだ。

　ロスさんには自分が仕事で成功したら叶えたい夢があとひとつだけあった。

　それは自分を信じてずっと応援してくれたお母さんに恩返しをすることだ。

・ボロボロの車に楽器を乗せて、17歳から全英を回る

　17歳の頃、ロスさんはミュージシャンになるための修行に出た。お金はあまりなく、ボロボロのトレーラーにドラムセットを乗せて、その身一つで全英を回っていたという。

　そんなロスさんを心配に思ったのは、ロスさんのお母さんであるリネットさんだ。「もしあの古いトレーラーが故障して何か事故が起きてしまったら...」など不安が尽きなかった。


・我が子を思い、買ったばかりの新車を売り支援する母

　そしてリネットさんはわが子のために決断をした。買ったばかりの新車、青いフォード・Kaを売り、愛する息子のためにバンを購入しプレゼントしたのだ。

　息子の安全を願い、彼の夢を叶える手助けがしたいという母心だ。

　結果としてリネットさんには新車を買ったローンだけが残った。自分が乗る車はおじいさんと共有で貸してもらうことになった。

　母親の寛大な夢への応援を受けたロスさんは当時「とてもこんなものはもらえない。まだ自分にはそんな価値は何もないのに...」と思ったという。そしてロスさんの心に一つの誓いが生まれた。

　「いつか成功したら母さんがあの時に売った、青いフォード・Kaをプレゼントしよう」と。