猫の寄生虫が人間の思考と行動を変える?失敗を恐れない起業家とトキソプラズマの関係(米研究)
猫を終宿主とする寄生虫「トキソプラズマ」による感染症「トキソプラズマ症」は、ほぼ全ての哺乳類・鳥類に感染し、人間の場合、世界人口の3分の一が感染している(日本で20~30%くらい)という研究報告もある。
免疫系が正常で、妊婦でなければ、初感染しても約8割の人はほとんど自覚症状もなく治療を要する必要もないと言われているが、トキソプラズマによる影響は、意外なところに及んでいるようだ。
近年、トキソプラズマに関する様々な研究が行われているが、最新の研究によると、トキソプラズマに感染している人は失敗を恐れず、起業志向が強くなる傾向にあるという。
・トキソプラズマが脳内の神経伝達物質に影響を及ぼす
トキソプラズマに感染したマウスは猫を恐れ亡くなるどころか、猫の尿の匂いに引き寄せられるようになる。
これはネコを終宿主とする原虫にとっては都合がいい。その詳しいメカニズムは解明されていないが、ドーパミン量が多くなっていることと関係があるかもしれないと言われている。
そして、なんと、似たような影響が人間にもあることを示唆する状況証拠がある。

・トキソプラズマに感染した起業家はリスクを恐れない
米コロラド大学の研究では、データベースを利用して、トキソプラズマの感染と起業家的活動との相関関係について調べた。
さらに学生とビジネスマンを対象に、簡単な唾液の検査を行い、トキソプラズマの寄生履歴についても調査した。
研究者が探していたのは、ビジネスにおける恐れを知らぬリスク選好型の性格とトキソプラズマへの感染履歴とに関係があることを示唆するデータだ。そして、それは実際に発見された。
トキソプラズマの感染に対して陽性だったほぼ1500人の学生たちは、ビジネスを専攻する可能性が1.4倍高かったのである。さらに「マネジメントや起業」に力を入れて取り組んでいる確率も1.7倍高かった。
また調査対象となった197人のビジネスマンについては、トキソプラズマ感染に陽性だった場合、いずれかの時点で起業をしていた確率が1.8倍であった。

過去25年分の感染率に関する国レベルのデータベースもやはり興味深いパターンを示していた。感染の有無がその人物が起業をするかどうかの予測因子であり、また失敗への恐怖の低さを示すというパターンが一貫してみられたのだ。
額面通り受け取るなら、トキソプラズマは脳に何らかの操作を行ない、普通なら懸念されるだろう費やされる時間や資金へのリスクを感じにくくしているようである。

2012年の研究からも、トキソプラズマが脳に影響を与え、ドーパミンの合成を促し、人を元気にしているという報告結果がある。
・猫が人を元気にする理由は寄生虫によるマインドコントロールかもしれないという仮説(欧米研究) : カラパイア
・ネズミに影響を与えているということは人間にも影響を与えている?
トキソプラズマはネズミに感染すると、猫の臭いがしても逃げなくさせてしまう。この現象は、猫の餌となるネズミから宿主に感染しやすくするための進化で獲得された特徴かもしれない。
では人間の場合は?
人間は猫の餌ではない。
だが一方で、ネズミは人間の生体を知るためのミニチュアモデルとして利用されている。同じような症状が絶対に出ないとは言いきれないだろう。
・深刻な影響はないが、人を不注意にしている可能性がある?
今回の研究結果は、深刻な心理学的症状を引き起こすほど重大な影響はないが、トキソプラズマが人を不注意にしている可能性を示唆している。
寄生虫の人間に対する影響を調べた研究は他にもある。
トキソプラズマの感染と経済的なパフォーマンスの負の相関について示唆した研究で、それによると、リスク選好型になることで、不安感が増大したり、信頼する能力が低下したりして、組織を成長させるよりは弱体化させるのだという。
こうした相関関係は今回も当てはまっているが、微弱な影響にとどまっている。性格によるものなのか、あるいは感染症によるものなのか関連性を更に詳しく調べる必要があるだろう。

・トキソプラズマ症に関する知識を
また、トキソプラズマ症に関する正しい知識を身につけることも必要だ。
猫がすべてトキソプラズマに寄生されているわけではない。また猫だけが保虫しているわけではない。豚肉・鹿肉・羊肉からも発見されることがある(十分に加熱すれば感染を防げる)
飼い猫が外出せず、かつ生肉を食べないのであれば、飼い猫から感染することはまずあり得ない。心配ならば、ゴム手袋などを着用して飼い猫のトイレを毎日清潔に保ち、手を良く洗いゴム手袋を消毒すれば良い。
空気感染、経皮感染はしない。猫の糞便に含まれる原虫(オーシスト)を経口摂取することで引き起こされる。また、糞便を触った手で目や鼻の粘膜に触れると引き起こされる場合がある。
ただし、どこで何を食べているのかわからない外飼い猫や、野良猫の場合は、トキソプラズマが潜んでいる可能性もあるので、妊婦や免疫機能が低下している人は近づかない方が良いだろう。

世界人口の3分の1がトキソプラズマに感染しているほどだが、免疫系が正常な人であれば初感染でもおよそ8割はほとんど症状がない。
残りの2割はリンパ節の腫れや発熱・筋肉痛・疲労感などが出るが、そのあと緩やかに(1ヶ月程度で)回復する。健常者が感染した場合は、免疫系の働きにより臨床症状は顕在化しない。
だがまれに急性症状が出る人がいる。また、免疫機能が低下している人や免疫不全者は重篤な症状が出る場合があるので要注意だ。
免疫系が正常でも妊娠中の女性は注意が必要となる。妊娠中に初めて感染すると、胎児に影響を与えることがある。
だがかつて猫を飼っていたり、今も飼い続けているのであれば、すでに陽性となっているか、その猫がトキソプラズマを保有していない可能性が高いのでそこまで心配するにはいたらないだろう。だが、妊娠中、野良猫を触るなどの行為は控えた方が良い。
飼い猫がいる場合は猫の糞尿の処理に気を付け、生肉を与えないようにすればほぼ大丈夫だが、精神的平穏を得るためにも医師に相談しよう。
不安だけがどんどん募り、根拠も確証もないまま、今まで飼っていた猫を手放すというような悲劇だけは避けたいものだ。
私はまだ調べたことはないのだが、物心ついた時から猫(+犬+鳥+ヤギ)がいて、野良猫とも数多く接触し、疥癬さえもいただいたことのあるので、トキソプラズマ陽性な気がする。
失敗を恐れず無謀な賭けに出て、注意力散漫なところがあるのは、トキソプラズマの影響なのかADHDの影響なのか、どっちなのだろう?どっちもだったら増強されてるなこれ。
References:Proceedings of the Royal Society B / niid / wikipedia/ written by hiroching / edited by parumo