清少納言の恋人?なのに恋人として登場しない理由…。枕草子のやりとりを探る:藤原実方 編 (2/3ページ)
このころの清少納言はまだ出仕し始めて間もないころで、歌をよくよむ方に自分のつたない歌を返すなんて恥ずかしい、とまだ慣れず引っ込み思案な様子がうかがえるころ。
このときはまだ実方とも交際していなかったのでしょうか。「枕草子」に実方の名(官職名)が登場する場面でも、二人が直接言葉を交わすことはありません。
結局二人の関係は……?では、二人の関係は結局何なのか。「実方朝臣集」にはきちんと二人の贈答歌があり、清少納言の私家集「清少納言集」にも実方が任国へ下る際に詠んだとされる歌が見られます。恋人であったことは間違いなさそうです。
一応「枕草子」にも恋人関係を示せそうな段があります。三巻本の本文最終段となる「まことにや、やがてはくだると言ひたる人に……」の段。
「まことにや、やがてはくだる」と言ひたる人に、
思ひだにかからぬ山のさせもぐさ誰かいぶきのさとはつげしぞ
「枕草子」(校注・訳:松尾聰・永井和子「新編日本古典文学全集」/小学館より)
清少納言に対して、「まもなく下向(地方に下る)というのは本当ですか」と言う人に、「そんなことは思いもかけないことです。だれがそのように言うのですか」と答えた歌です。
ここでひとつ紹介したいのが、「小倉百人一首」にとられた実方の和歌です。
かくとだにえやはいぶきのさしも草さしもしらじな燃ゆる思ひを
「さしも草」と「させもぐさ」、「いぶき」……なんとなく関係のありそうな歌のように思えます。ただ、清少納言が実方の陸奥国下向について行くかもしれなかった、というのはちょっと無理がありそうです。「新編日本古典文学全集」の頭注でも、「作者の前夫、橘則光にかかわる記述と見る考えもある」としています。
実方の「かくとだに」の歌は誰に贈ったものであるか明らかではありませんが、清少納言に贈ったものではないとは言い切れません。「うた恋い。」でも、清少納言に贈った歌として話が展開しています。