お色気あり、ブラックなお話もあり?「今昔物語」に登場する医師は個性派キャラ揃い

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お色気あり、ブラックなお話もあり?「今昔物語」に登場する医師は個性派キャラ揃い

平安時代、朝廷では典薬寮(てんやくりょう)と言う医療専門の機関をもうけていました。民間にも医療従事者はいましたが、この時代を代表するのは何といっても優れた技術や、海外から取り寄せた薬を調合して高貴な人々を相手にする医師達で、今回は『今昔物語』に登場する医師の中から、選りすぐりのエピソードを紹介致します。

病草紙より(部分)

女性患者に惚れこんだ老医師…その恋の行方は?

まず最初に紹介するのは、典薬寮に勤務する老師の話です。この老師は典薬頭(てんやくのかみ)の地位を朝廷から賜った、典薬寮の長官なのですが、彼の館に一人の女性が来ます。

彼女は下半身に出来た腫れ物を治して貰いに来た患者で、赤の他人である老師の前で衣服をはだけさせ、治療を依頼して来たのです。老師は医師としてこの美女を哀れむと同時に、内心では惚れこんでしまったのもあり、自らが治療にあたって完治させます。しかも、美女の方からも交際を望むかのような言葉も聞けて、老師は大満足。

が、そこで思いもよらぬ出来事が起きました。夕食を出そうと美女の部屋に行くと、上着や櫛箱が放置され、もぬけのからではありませんか。実はこの女性、病気が治るや否や女好きの老師を撒いて、謝礼代わりの品物を置いて行方をくらましていました。せっかくのチャンスを逃がした老師、悔しくて人目もはばからずに泣きじゃくったと言うことです。

患者に口封じとして狙われる…絶体絶命の医師を救ったのは?

患者に下心を抱いて振り回されるコミカルな医師がいたかと思えば、一方で患者に命を狙われた医師もいます。平貞盛(たいらのさだもり)と言う武将はある時、矢傷を治すために京都から名医を招いたのですが、その時に子供の肝を使った薬を使わせていました。

「朝廷から信頼されている武将であるオレ様が、矢傷を負った上にあんな薬を使ったと知れたらプライドに関わるなぁ…ようし、あの医者の口を封じてやる!」

この貞盛は優秀な指導者だったのですが、その名誉を守るためには恩人である医師を暗殺すると言う非道な一面もありました。それを知って怖気付く医師を助けたのは、何と貞盛の息子でした。彼は子供の肝を欲しがる貞盛から自分の妻子を殺せと言われた時、医師の助言で救われていたのです。

非情な父親よりも恩人に味方するのを選んだ息子は、医師を従者に変装させて歩かせ、他の者を馬に載せて医師のように見せかけます。その作戦は大当たりで、貞盛が差し向けた刺客は乗馬していた身代わりを攻撃し、医師は無事に京都へ逃げ帰ったのでした。

本項では割愛しましたが、今昔物語にはまだまだ多くの医師が登場します。お后に横恋慕した行者を捕えて呪殺された宮中の医師、一目見ただけで病気とそれをもたらした寄生虫の名前まで言い当てた名医など、その活躍は様々です。こうした医師のエピソードを通して当時の医学や、病気に対する考えを知るのも、一興かも知れませんよ。

画像:Wikipedia『薬研』『医師 (律令制)』

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