「妊婦の葬儀参列は良くない」という数々の言い伝えとそれが生まれた背景

心に残る家族葬

「妊婦の葬儀参列は良くない」という数々の言い伝えとそれが生まれた背景

ご自身や家族が妊娠中に、とても身近な親族や親しい人の死に遭遇してしまう。そんなとき、果たして妊婦は葬儀には参列しても良いものかどうかと戸惑う人もいるでしょう。妊婦の参列を避けるように古くから伝承されてきた話があります。でも、故人との間柄が近いなどの状況によっては、最期の別れとなる大切な場を、そう躊躇なく欠席できるものでもありません。

■葬儀参列を控える昔からの言い伝え

妊娠しているときに、葬儀という形で大切な人との別れが来てしまう。悲しいですが、そうした話は起こり得ることです。

昔は、「お腹の子供があの世に連れて行かれてしまう」「火を見るとお腹の子供にあざができる」「骨を拾うのはいけない」など、妊婦が葬儀に参列することをよしとしない言い伝えがありました。また、その伝承への対策として、「鏡をお腹に忍ばせる」「赤い帯をお腹に巻く」なども同様に語り継がれてきました。

これらに医学的な根拠はまったくなく、迷信です。ですが、こうした迷信が生まれるには根拠があります。ライフラインも整わず医療も未発達だった頃、感染症で命を落とす人が多く、葬儀場は病の感染リスクが高い場所の1つとされていました。そこに抵抗力の低い妊婦が立ち入らないようにという考えが基にあり、妊婦の参列を控えさせるようになったとされています。


■迷信をあなどることなかれ

今の時代も、こうした伝え話を聞くことがあります。昔の迷信にも関わらず今もなお言われ続けているのは、妊婦や胎児の環境を守ろうとしている背景がうかがえます。

例えば火葬場は、交通の便にさほど富んでいるとは言えず、周囲に産院がないケースが殆どです。そういった場所に妊婦が行き万が一体調を崩しても、すぐに対処ができる保証はありません。
また、通夜や告別式を終えた段階でも、既に妊婦には心身ともに相当の負担がかかっています。その上に火葬場で慣れない時間を重ねる疲労は、胎児にも影響しないとは言い切れません。

「火を見るな」、「骨を拾うな」という類の伝承は、今の時代に言い換えれば、「そんなに長い時間、慣れない環境で身体を酷使しないで」という意味合いも含んでいるものと思われます。言い伝えは迷信ではありますが、「古い迷信だから、今は従わなくてもいいもの」と安易に切り捨てられるものでもないのです。

■葬儀を安心して迎えるために

最期の別れに出席したい。その思いは当然のことでしょう。でも、身重の身体には予期せぬことも起こるので、妊婦が参列するとなると不安や戸惑いもあるでしょう。
そういったときは、葬儀に参列する親戚や友人に事前に相談し、体調を周囲に知ってもらい安心できる環境を作ることも1つの方法です。

仮に斎場で妊婦が体調不良を感じたときでも、様子を察して対処をしてくれる人が近くにいると分かっていると、不安は和らぐのではないでしょうか。もし、体調がすぐれず参列できないとなっても、事情を知っている人が同じ場所にいることで、他の参列者への説明もしやすくなると思います。
何かがあったときに頼れる人がいることで、妊娠中のご自身や家族が安心して過ごすことができる。そうだとしたら、その人間関係を作っておくことは、産後の生活にもつながる貴重な機会になることでしょう。

■故人からの最期の贈り物

故人との最期の別れは、身体に何事もなくても辛いものです。ご自身や家族が妊娠中となると、様々な意味で辛さが増すことでしょう。

ですが、捉え方を少し変えてみるのはいかがでしょう。妊婦やその家族が、産後の生活に向けて人間関係を深めるきっかけになる、と考えることはできないでしょうか。

そのきっかけが、大切な人との別れだったとしたら――。それは、故人が最期に贈ってくれた「絆」というかけがえのない贈り物なのかもしれません。

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