【召喚連載】メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館 / 第5回「大日本帝国の終焉」について悪魔と語る

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【召喚連載】メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館 / 第5回「大日本帝国の終焉」について悪魔と語る

megatensuzuki

ゲームクリエイター鈴木一也氏といえば、代表作として「女神転生」シリーズや「真・女神転生」シリーズ、そして「モンスターメーカー」シリーズなどの名作を世に送り出した偉大な人物だ。このコーナー「メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館」は、そんな鈴木一也が、悪魔の大司教として悪魔や天使を召喚し、あらゆる事象に対して言及する前代未聞の場である。

ちなみに鈴木一也氏は、「女神転生」から始まったゲームシリーズの世界観やシステム、そしてあの名言「コンゴトモヨロシク」を創り出した人物であり、ゲーム業界やファンにおいてカリスマ的存在でもある。

・終戦の日に召喚!
鈴木大司教「我は汝を召喚す、生まれ無き者よ! ……アオス! アバオス! バスム! イサク! サバオス! イアオ! 汝、迅く来たりて我が前に従え! ソロモン王に封じられし不和の侯爵、魔神アンドラスよ!」

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アンドラス「グワア! ここは地獄より暑いではないガァ?? 何が起きたのだ大司教よ!」
大司教「異常気象で北半球はどこも暑い夏なのだ。我慢してくれ」
アンドラス「ガァ! この程度の温度はなんでもない! して、我に何の用だぁ?」
大司教「敗戦の日に思う。なぜ我が国はあのような戦争をしてしまったのか?」
アンドラス「まずは贄だ!!」

大司教「今回はジューシーな鶏もも肉のミートボールだ。ひき肉に、みじん切りの玉葱、人参、生姜を加え、小麦粉とパン粉をつなぎに入れる。スパイスと味付けには、胡椒、花椒(ホァジャオ)、クミン、紹興酒、ナンプラー、醤油を使う。これを練って練って、団子にしたものをカリッと揚げた。熱々を食うが良い」
アンドラス「ガハッ!! これは熱い!! だが我は平気だぁ! グアハ! 熱い! 美味い! アズッ!! グマッ!! ズッ! マッ! ズマッ!」
大司教「慌てて食わぬでもよかろう」
アンドラス「堪能した! ホァジャオというのガ!? 刺激ある良き香りダァ!」
大司教「満足できたなら、何よりだ」

アンドラス「さて、お前の国がなぜ戦争したのかだナァ? 簡単にいえば、時代の流れがそうさせたということだ」
大司教「それでは答えにならぬ」
アンドラス「ガハハハ、それはそうだ。あの時代、日本人は黄色人種として孤軍、白人に立ち向かって行っタァ。それまでの日本の戦いは白人の手先として戦っていたものだったが、あの太平洋戦争……」
大司教「大東亜戦争だ」
アンドラス「ガァ、やはりその呼称を選ぶカァ。いいだろう、あの大東亜戦争は、大きな世界大戦の一端を担っていたのは言うまでもないガァ、まず欧州に先駆けて、日本は中国と戦争をはじめた。第二次世界大戦の始まりはここからだと言ってよい」
大司教「日本が中国を侵略したとされているが……わしはそうではないとみている」
アンドラス「ほお、戦争の悪魔である我に教えてくれるカァ、その理由を」
大司教「当時日本軍と中国軍の大陸に於ける戦力比は、1:5だった。日本が圧倒的に劣勢だ。戦争を仕掛け侵略するのなら、どんなに最低でも3:1は無いと不可能だ。よって日本には侵略の意図などまるでなかったのだ」

アンドラス「ドイツはフランスに対して正面軍では戦力的には劣っていたがこれは?」
大司教「ドイツには電撃作戦という新しい戦争プロトコルがあった。それにベルギーを蹂躙して手薄な沿岸を突破して行くことができた。戦力の集中投入によって、各前線での戦力比は常に有利にできたのだ。これに対して日本には侵略するために何の準備も無かった。兵員を送る輸送船さえ足りなかったのだ」
アンドラス「良いだろう! ではあの時何が起きたのカァ? まず前提として、中華民国軍が戦争を仕掛ける気満々だったということだ。奴らは対日戦争の準備を着々と整えてきた。ドイツから武器を大量に輸入し、軍事顧問まで雇い入れて、軍隊の近代化を成し遂げていたのだ」
大司教「ドイツは第一次世界大戦で日本に植民地を奪われ、その復讐に燃えていたからな。白人は中国人と日本人を戦わせて共倒れを狙っていたのだろう。すでに満洲建国がなされていて、白人世界はこれを気に入らなかった。特にアメリカがな」
アンドラス「当時はまだ新興の二流国と見做されていたアメリカは、植民地支配に関して出遅れておった。その領土拡張欲は貪欲そのもので、ちょっと刺激してやればすぐ戦争に走った。あれは楽しかったぞ!」
大司教「なんと迷惑な悪魔よ……」
アンドラス「いいぞ、もっと褒めるがよい! 1896年の対スペイン戦争も、自軍の軍艦を爆発させて、スペインの攻撃だと騒いで国内世論を戦争に持っていった。この戦争で勝利し、スペインからフィリピンを奪ったのだ」

大司教「満洲は何も無い荒野が茫洋と広がる不毛の大地だったが、日本が巨額の投資と人的資源の投下で、豊かな緑の沃野に変貌させた。白人はそれを横取りしたかったのだ。日本がここから手を引くということは、国家が滅びる危機を伴っていた」
アンドラス「中華民国も満洲を欲っしていタァ~! それまでの支配者である満洲人を毛嫌いしていたのにナァ!」
大司教「逆に満洲では五民族の協和という政策が取られた。満洲、日本、中国、モンゴル、朝鮮、どの出身でも自分が耕せばその土地が与えられ、国民になれた」
アンドラス「ガァァァァア! くっそ甘い理想主義をそのまま実現しおった。反吐が出そうだガァ! しかし所詮は日本の植民地ではないのガァ!?」
大司教「清の最後の皇帝溥儀(フギ)が皇帝となり、役人も警察も現地人が採用された立派な独立国だ。日本の保護国として外交権と軍事力だけは持たされなかったが、白人国家に侵食されぬためには必要なことだった」
アンドラス「確かに……当時中国でさえ国土の半分は実質的に列強が植民地化していて、中華民国が支配できていたのは限られた地域でしか無かったナァ~」
大司教「なぜ彼らは白人と戦おうとしなかったのだろう」
アンドラス「アヘン戦争で敵わないと尻尾を下ろしたのダァ! だからまずは生意気な日本を追い出そうとした! これなら白人も手を貸してくれる!」
大司教「直接助けたのがドイツとアメリカだったな」
アンドラス「お前たちの歴史では、盧溝橋事件をきっかけに日本が中国に攻め込んだことになっているダロウ? ダガシカシ、事実は違う。事件の後に小競り合いがあったが、腰抜けの日本は懸命に戦争回避を画策していたのダァ!! 避けられないのだから、とっとと戦争しちまえば良かったのにナァ!」

・上海総攻撃!
大司教「では、なぜ日本が紛争の不拡大を取ったのに、戦争に発展したのか?」
アンドラス「まずは国内の世論ダァ~。通州事件を知っているカァ?」
大司教「7/29のあの残虐な虐殺事件だな」
アンドラス「そうダァ! 入植していた日本人村の200人以上をなぶり殺し! 悪魔も真っ青な猟奇的手段で婦女子がぶち殺されダァ! これで中国撃つべしと日本人は怒りまくった」
大司教「これも汝が関わっていたのか?」
アンドラス「流石にこんな酷い手段は取らん。もっと戦争はスマートに始めなくてはナァ! そして火に油を注いだのが朝日新聞を筆頭とする新聞各社だ!」
大司教「国は戦争を止めようとしていたのに、マスメディアが煽ったのか!」
アンドラス「実はブン屋にはロシア共産党の息がかかってるからナァ~。コミンテルンというやつダァ! 奴らは素晴らしいことに戦争拡大を望んでいたんダァ。中国では国民党と日本帝国を戦わせて戦力を削ぐ! そうすれば中国共産党が力を伸ばせる。さらに大戦争の混乱の中で各国で共産革命を打ち上げのダァ!」

大司教「しかし共産革命は上手く行かなかったな」
アンドラス「そんなことはないぞ! 戦後ベトナム、カンボジア、ラオスなどインドシナ半島では成功した! 北朝鮮が建国され、チベット、モンゴル、東トルキスタンは中国共産党に侵略を許した」
大司教「そうであった……」
アンドラス「そして決定的なのは上海攻防戦ダァ! 国民党軍は上海の日本人居留区に向けて総攻撃を仕掛けたのサァ! 3万もの精鋭部隊が4千人の日本軍に襲いかかったのダァ!! 日中戦争はここから始まったとするのが正しい」
大司教「上海には列強各国が租界を持っていたはずだが?」
アンドラス「白人とは戦わん。しかし誤爆の振りして数千人の民間人をぶち殺してるガ~ハハハハハ! 結局日本軍は白人も守り通したことになるだろう。侵略する中国兵は暴虐の限りを尽くすからナァ! しかも中国空軍には、アメリカ陸軍機とパイロットまで参戦してるのダガァ!」
大司教「真珠湾よりずっと前にアメリカが参戦していたことになるではないか!」
アンドラス「アメリカ政府は、あれは義勇軍で預かり知らぬ、パイロットは指導だけで参戦してないと言い張っているがナァ! 大嘘ダァ!!」
大司教「なんという……」
アンドラス「その後日本も増援を送ったが、中国軍の方がさらに多くの増援ダァ。7万の中国軍に対して日本は6千ちょっと、ナンと絶望的な戦いなのダァ!!」
大司教「そうだな……しかし、日本は上海で勝ってしまった……」
アンドラス「ガァ、強すぎダガァ! 凄いぞ日本軍! 両軍すさまじい死傷者を出しながら、ついに10倍の中国軍を追い返してしまっダガァ~。そのまま敵の首都南京まで、たった半年で攻略してしまうわけダァ~!」
大司教「なまじ大勝利してしまったがゆえに、取り返しのつかぬことになっていくのか……」

・南京大虐殺は無かった
アンドラス「中国軍は退却する際、ロシア軍と同じで焦土作戦を敢行するのダァ! これがまた、悪魔が口にするのもはばかれるほど惨いものダァ……。すべての家々を略奪し、食料を奪い、畑は焼き払うのダァ! もちろん見つけた女は集団で犯しまくるし、抵抗する男は即殺す。壮健な男は徴兵して連れて行ってしまうから、村は滅んでしまうのダァ! 中国ではこれを三光作戦と呼ぶ」
大司教「余りに酷い……追撃する日本軍に、現地の食料で補給を与えないためだな。それに戦後その残虐行為をすべて日本軍が行ったと主張していたのだな」
アンドラス「残念だったナァ! 戦争に負けた日本は何も言えなくなるわけダァ!!」
大司教「しかし、日本の進撃が早すぎて、助かった村が多くあったはずだ。日本軍は金を払って、といっても軍票だが、村々から食料を徴発している」
アンドラス「そして首都南京まで日本軍に迫られた中華民国国民党軍は、もうまるで統制が取れなくなった! なにせ司令部はとっとと重慶にまで逃げてしまったガ~ラナァ~~カハハハハハ!!」
大司教「南京背後の長江を渡るのに、相当混乱したそうだな」
アンドラス「民間人が船で逃げようとしたら、虐殺して軍人が乗り込む。その軍人も皆が乗れないから、残された奴は腹いせに、出港した船に機銃掃射して逃げた奴を撃ち殺す! 人の命をなんとも思ってないガァ!」
大司教「しかし日本軍が南京に入城したら、混乱は収まった。民間人は保護区に隔離され、憲兵隊が見張りに付いた。おかげで郊外に逃げていた者たちも安心して戻り、正月の祭りが賑やかに行われたのだ」

アンドラス「城壁の外壁で、毎日のように民間人が銃殺されたと聞くガァ?」
大司教「あれは、便衣兵といって、制服を脱ぎ民間人の服を着た兵士だ。戦争を逃れるためにやった者もいるが、破壊工作に従事する者もいるから、処刑されるのは仕方ない。スパイとみなされるのだ」
アンドラス「捕虜も大勢殺されたダロウガァ! 参謀本部からは捕虜殺害司令が出ていたぞ!」
大司教「まず捕虜が多すぎた。そのため食料も不足する上に、日本軍兵士より多いものだから、管理しきれなかったのだ」
アンドラス「だから殺したのガァ?」
大司教「ほとんどの指揮官が参謀本部の命令を無視した。2万人を超える捕虜を連れて、日本軍は上海を目指して進んだが、長江のほとりで船を待っているうちに捕虜の大暴動が起きたのだ。それは月のない闇夜だったという。敵味方入り乱れての大混乱となり、日本人も中国人も大勢死傷者が出た。朝になると、捕虜たちは四散してどこにも居なかった」
アンドラス「それは見ものだったろうナァ! 恐怖に駆られた男どもが、近づく者を片っ端から殺そうとするのダァ! その地は長らく呪われたものとなったであろう」

大司教「それ以来、仕方なく捕虜を間引くようになったらしい。しかし、これは当時は違法ではなかったのだ」
アンドラス「おや? 日本はハーグ陸戦条約に署名していたはずダガァ? 捕虜の殺害は合法カァ?」
大司教「いや、中国がこれに署名していないのだ。ゆえに多くの日本兵捕虜が中国兵によって残虐な方法で殺害されたのだ。敵側が署名していない条約を日本だけが守る必要はまったくない」
アンドラス「知っているぞ! いたぶりながら殺したガァ! 爪や肉をはぎながら殺すこともナァ!!」
大司教「そのため後に首相となった東條英機が[生きて虜囚の辱めを受けず]というのを訓示するまでになる。これが言葉として独り歩きして、アメリカに対して降伏するより全滅を選ぶようになるのだが……」
アンドラス「もっともアメリカ軍も日本兵捕虜を虐殺していたのダガァ! 余り知られていないが、黄色いジャップに人権は無かったガァ! それどころかアメリカ軍は占領地で民間人まで虐殺していたのダァ!」
大司教「本当のことか……」
アンドラス「有名人による内部告発があったからナァ! そいつはそのせいで社会的地位を抹殺されたガァ!」
大司教「それは誰なんだ?」
アンドラス「チャールズ・リンドバーグ。大西洋無着陸横断飛行を成し遂げた英雄ダァ!」
大司教「そんな人が告発していたのか……しかし、日本軍は民間人を虐殺していない。これが重要だ。
 南京虐殺が2,3万人あったとする文化人は、この捕虜の虐殺をもって証拠としている。しかし、民間人の殺害と捕虜の殺害はまったく違うのだ。民間人虐殺の物的証拠は何ひとつもない。死体すらない。殺人事件としてもまったく立証できん」

アンドラス「30万人ドバーッと虐殺したほうが、日本はカッコよくないカァ??」
大司教「カッコよくないわ! とにかくあれは戦後の東京裁判になって突然降って湧いた話だ。事あるごとに日本を非難していた国民党の蒋介石が、南京に関しては戦争中何もコメントしていない。南京政府の惨敗と中国軍の味方と民間人殺害が事実だからだ」
アンドラス「当時蒋介石は大虐殺など思いつかなかったのだガァ! 許してやれ!」
大司教「アメリカが日本帝国をナチのような悪者に仕立てたかったのだ。なぜなら広島長崎の原爆、東京大阪など都市への無差別爆撃を正当化するためにな」
アンドラス「ガァ! そうだろうナァ~。奴らは正義の味方が好きだからナ! ちっとも正義だった歴史などないのダガァ~~ハハハハ! イヤ、冷戦の勝利は一応正義と認めてやろう!! ガァハハハハハハ!!!」
大司教「そうだな……共産主義の勝利した世界はまさにデストピアだ。これからも少しは正義を担って欲しいものだ」

悪魔:アンドラス(Andras) 古代ユダヤのソロモン王に封じられたという72柱の悪魔のうち63番目の1柱。不和の侯爵として知られる。地獄では悪魔の30の軍団を率いる大侯爵である。フクロウかカラスのような凶相の鳥の頭部を持ち、鞘走れば燃え上がる鋭利な剣を携え、巨大な黒狼に騎乗する堕天使の姿で現れる。争いと不調和を人々の間にもたらす権能を持つ。その本質は残虐で暴力的とされる。召喚者の敵を仲間割れで自滅させる。しかし召喚者自身が不適格ならば、その能力を使って召喚者とその仲間を引き裂き、殺し合わせるという。『真・女神転生 ―東京黙示録―』では、吉祥寺ライブハウス、ゴールデンエレファントで行われたサバトに於いて、小林章人によりロックギタリストの肉体を触媒にして召喚される。

筆者: 鈴木一也(すずきかずなり) 1960年11月1日東京生まれ。ゲームクリエイター。代表作『女神転生』『女神転生Ⅱ』『真・女神転生』『モンスターメーカー』シリーズ。『偽典女神転生』『新世黙示録TRPG』『ジェットインパルス』『つきびと』など多数。デジタルデヴィル(株)代表。専門学校TECH.C.にて講師も務める。父にアナログゲームのクリエイターである鈴木銀一郎がいる。

もっと詳しく読む: メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館 / 第5回「大日本帝国の終焉」について悪魔と語る(バズプラス Buzz Plus) http://buzz-plus.com/article/2018/08/22/megaten-suzuki-end-empire/

イラスト: 闇雲大佐

「【召喚連載】メガテン大司教・鈴木一也の邪教の館 / 第5回「大日本帝国の終焉」について悪魔と語る」のページです。デイリーニュースオンラインは、鈴木一也召喚メガテンカルチャーなどの最新ニュースを毎日配信しています。
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