古代ロマン「土偶=宇宙人説」をこの目で確かめる大チャンス!
東京・上野の東京国立博物館で、特別展『縄文―1万年の美の鼓動』が9月2日まで開催されている。夏休みも残りわずかということもあり、連日、親子連れで大いににぎわっているようだ。
今回の展示では縄文時代草創期から晩期まで、日本列島の多様な地域で育まれた土器や土偶などを展示しているが、土偶と聞いてまず思い浮かべるのが、青森県つがる市・亀ヶ岡遺跡から出土した『遮光器土偶』だろう。
この非常に特徴的な形をした土偶は、1970年代のオカルトブーム時に「宇宙人説」がたびたび論議されたことを記憶している人も多いのではないだろうか。
当時の子供向け図鑑には、よくこんなイラスト付きの記事が掲載されていた。こちらは『なぜなに空とぶ円盤のふしぎ』(小学館/1973年)に掲載されたもの。
《大きな目は宇宙サングラス、耳にはじゅしん器、からだにはだぶだぶの宇宙ふくを着ている宇宙人に、この土偶がにているようにも思えますね。》と記されている。
今にも目から怪光線を出しそうな雰囲気。このカラーイラストが当時の子供に与えたインパクトは大だ。
こちらは『追跡推理空飛ぶ円盤』(立風書房/1974年)に掲載されたもの。
《ある日とつぜんやってきた空飛ぶ円盤。そこからおりてきた宇宙人。金属のかがやきは、まったく初めて見るものだったろう。「これは、われわれがふだんおがんでいる太陽の神様だ!」 縄文時代人は、そう考えたかも知れない。そして、その形を土で作り、子孫に伝えた、とは考えられないだろうか》
イメージは『なぜなに――』に酷似しているが、解説は幾分、説得力のあるものになっている。
宇宙人説は完全否定されているが…
そもそも、この「遮光器土偶=宇宙人説」は、スイスの宇宙考古学者エーリッヒ・フォン・デニケンが1968年に発表した『未来の記憶』の中で、「遮光器土偶は宇宙人の姿を模したものだ」と主張したことが発端。
しかし、現在では土偶は安産や病気平癒の祈願、豊穣などを祈るために作られた呪術道具であり、崇拝の対象としての神像ではないことが分かっている。
また、ゴーグルをかけたような目をした人面は他にもあるし、似たような体型をした土偶も数多いことから、たまたま土偶に共通する要素が集まった結果、宇宙人に見える姿になっただけ、といわれており、宇宙人説は完全否定されている。
果たして「遮光器土偶=宇宙人説」は失笑されるような珍説なのだろうか――。まるでゴーグルようなメカニカルな感じの目は、決して顔に描かれた模様のようには見えないし、いかにもスーツ然とした異様な姿は他の土偶には見られないものだ。
今回の『縄文展』では、亀ヶ岡遺跡から出土したものを含め、3種の遮光器土偶を展示している。ぜひ、ご自身の目で真偽を確かめてみてはいかがだろうか。
【画像】
ツネオMP / PIXTA(ピクスタ)