「敬意なき介護」を変えた 民俗学者の取り組みとは (2/2ページ)

新刊JP

被介護者への敬意がない介護が双方にとっていい結果をもたらさないことは、容易に想像がつく。

しかし、たとえ「介護する側」と「される側」の一方的な関係であっても、「聞き書き」をする間は年長者である被介護者に教えを乞うことになる。固定化された人間関係がつかの間逆転する。この効果は思いの他大きかったようだ。

六車さんの言葉を借りれば「援助の対象でしかなかった利用者さんが、その生き方とともに立体的に浮かび上がってきて、介護スタッフは、長い人生を歩んできたひとりの人間として利用者さんと初めて向き合うことができるようになってくる。」聞き書きによって、手のかかる利用者も尊敬できる人生の大先輩として感じられるようになったという。

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本書は六車さんが体験した介護の現場が語られたり、彼女が勤務する少人数制のケアハウス「すまいるほーむ」の取り組みが明かされたりするだけではなく、「聞き書き」で得た老人たちのエピソードを集めた民俗学の書でもある。そのエピソードからは、「昭和初期や大正時代の人々の暮らしぶり」と聞いて私たちがイメージする生活像とはかけ離れた時代の実像が見えてくる。

「介護」と「民俗学」の出会いは、介護に新しい価値観を、民俗学に新たな調査の場をもたらしたのかもしれない。

(新刊JP編集部)

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