相続放棄したら祭祀財産も放棄され、墓守としての責任も消失?

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相続放棄したら祭祀財産も放棄され、墓守としての責任も消失?

最近、墓じまいに関するトラブルが多く報道されている。そのトラブルとは、墓じまいの際にお寺やお墓の管理人に支払うお布施としての離檀料や墓石の撤去処分費用に莫大な金額を請求される場合、親族間にて感情的な対立が発生する場合が多いらしい。トラブルを解決するためには、事前に親族同士で話し合い、お寺とも協議していくべきであると考える。その他に墓じまいに関して誤解されることが多い問題がある。それは相続との関係だ。今回は墓じまいと相続について触れてみたい。

■相続と墓じまいに関連性は一切ない

まずはじめに、墓じまいと相続は、一切関係ない。相続とは亡くなった方の財産を相続人が継承することであり、墓じまいとはお墓即ち墓石を撤去処分し、敷地を更地にしてお寺に返還することを言う。つまり相続ではなく別の問題だとも言える。故にある種の誤解が生じることもあるのだ。それは、相続放棄をすればお墓の所有権が無くなるから、墓守をする必要も無くなると言った誤解だ。相続放棄をしたと言っても、墓守から解放されるのか否か、それは状況によって変わるのだ。

■相続放棄しても墓守から開放されるわけではない

お墓の所有権について、民法第897条1項には「系譜、祭具及び墳墓の所有権は,慣習に従って,祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。但し、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する」とある。祭祀を主宰すべき者とは、法的には祭祀承継者と言い、お墓や仏壇を承継し法事等の祭祀を実行する人のことだ。

この場合の慣習とは、被相続人が指定した人、つまりは相続人達のうち長男か長女といったところだと考えられる。また、慣習が明らかでない場合には家庭裁判所が判断し、決定することになる。こうなると、祭祀承継者に指定された場合には相続放棄しても墓守から解放されることにはならない。承継を放棄することは事実上不可能なのだ。

■墓じまいが起こる理由

毎年夏のお盆になると、会社は休みとなり車や電車あるいは飛行機で里帰りを兼ねて、遠方にある先祖代々のお墓に墓参をする方々を多く見かける。若くて体力もあるうちは、遠距離の移動を伴う墓参は問題ないかもしれない。しかし、年を取り体の自由が効かなくなってくると、移動そのものも困難な状態となり、墓参もできなくなってしまう。墓じまいの根底にある原因の一つはこのような状況なのだろう。

■祭祀財産の承継を拒否したい、墓守から開放されたい場合

どうしても祭祀の承継、即ちお墓の維持管理の承継を拒否したい場合、幾つか留意して欲しい点がある。お墓は相続税非課税であり、祭祀承継者は祭祀並びにお墓の維持管理をしなくても罪に問わることもなく、また、祭祀承継者が責任を以てお墓や仏壇を処分することができるので、これらの点を踏まえてお寺や親族と協議していった方が円満に解決できるはずだ。

もう一つ。墓じまいの手続きは法的に結構煩雑な部分があるため、弁護士や行政書士に相談のうえ、手続きを依頼すればベストだ。他に手続き一切を請け負って貰える葬儀会社に依頼しておくのも良いだろう。

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