やってみてわかった作字の難しさ 円城塔、新作『文字渦』を語る(1) (2/3ページ)

新刊JP

アプリの方は「大漢和辞典」という15巻くらいある漢字字典まで入っていて、「“人”が四つ入っている漢字」というような条件を入れると探してくれる。

すると大体あったんですよね。そうなると、「あるなら作らなくてもいいんじゃないか」という気持ちになってきて(笑)。だから「文字渦」にある漢字は基本的にはユニコードにあります。ないのは数文字だけですね。基本的にはユニコードにある漢字を、という方針に切り替えました。

漢字を作るのは、やってみると案外難しかったです。無理矢理作ることはできるのですが、そうすると見た目が漢字に見えない。何でも三つ並べてみるとか、手は色々あるのですが、そこまで面白いだろうかという気持ちもあって、それなら既存の漢字の中で変なものを使ったほうがいいなと。

表紙

――それだと出版社や印刷所の負担も軽くなるわけですか?

円城:それが、そうでもないんです。ユニコードの中でもあまりに珍しい字はやはりフォントを作らないといけませんから、あらかじめ書き出しておいて、「今回はこの文字を使いますよ」と毎回原稿を渡す前に知らせていました。

フォントは1日に数文字しか作れないらしいので、締め切り当日に「今回はこの10文字を使ってください」とやってしまうと、おそらく原稿が落ちてしまいます。

――今回は断念したということで、新しい漢字作りは次作に持ち越しということになりますか。

円城:どうでしょう。正直あまり必然性が見えない(笑)。漢字を作るのはそれなりにハードルが高いのもありますが、新しい漢字を作らなきゃできないことって何かなと考えた時にあまり思い浮かばないといいますか。

そういえば、H.P.ラブクラフトの「クトゥルフ神話」に出てくる神々の名前を表す漢字を作るというのを考えたことがありますね。「アザトホース」とか「クトゥルフ」という漢字を一文字で作ってルビをふっておいたら面白そうだなと。誰か笑ってくれそうじゃないですか。

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