世の中おかしな事だらけ 三橋貴明の『マスコミに騙されるな!』 ★第285回 公共サービスの撤退は許されない (2/3ページ)
特に問題になるのは、やはり公共サービスの民営化である。民間企業の目的はビジネスであり、利益だ。水道の民営化があたかも「老朽水道管の交換」の特効薬のごとく語られているが、ナンセンス極まる。民間企業の目的は利益最大化であるため、「利益にならない」老朽水道管の交換は当然、後回しだ。
そもそも、公共サービスは「利益以外」の目的も持つ。鉄道や水道であれば、地域のインフラストラクチャーを維持し、住民の生業や生活を守るという目的だ。交通機関もライフラインも提供されない地域で、人間は暮らすことができない。規制緩和や民営化で公共サービスが縮小していくと、人口が特定地域に集中し、国家全体の安全保障が脅かされることになる。
災害が起きたとしても、公共サービスは「撤退してはならない」のだ。公共インフラが災害で破壊されたとして、
「復旧しても利益にならず、コストもかかるために撤退する」
といった論理は許されないのである。
とはいえ、株式会社の論理に従えば、「利益にならないから、復旧せずに撤退する」という選択が合理的となる。だからこそ、公共サービスは「国営」「公営」である必要があるのだ。
7月の西日本豪雨災害を受け、いまだに復旧していない鉄道路線が複数ある。本稿執筆時点で、JR山陽線は三原―海田市間、下松―柳井間で運休が続いている。鉄道が復旧しないため、貨物路線も使えず、各地の物流は大きな打撃を受けている。運休が続く路線の沿線住民からは、
「このまま廃線になるのでは」
との懸念の声が漏れている始末だ。西日本豪雨の被災地に限らない。国鉄が分割民営化されて以降、特に赤字が膨らんでいるJR北海道では、廃線になる路線が続出している。さらに、同じく赤字続きのJR四国も、路線維持が「困難である」と正式に表明している。
そもそも、国鉄民営化時に「確実に黒字になるJR東海」と「確実に赤字になるJR北海道、JR四国」に同じスキームを適用したのが間違いなのだ。少なくとも、JR北海道とJR四国については、政府がより関与する形の分割をするべきだった。
北海道や四国のJRは赤字なのだから、廃線は仕方がない、とはならない。なにしろわが国は自然災害大国だ。