矢野浩二「自分に疑問を感じたら、思い切って行動していくというのも大事」中国で這い上がった人間力

日刊大衆

矢野浩二
矢野浩二

 最近になって日本でも、インタビューをして頂いたり、メディアに出させてもらう機会が増えてきたんですが、いつも中国で有名な日本人俳優ってことがクローズアップされるんです。それはありがたいことではあるんですが、このままでは、いかんなと思っています。

 日本人として生まれた以上は、故国で人様に顔を覚えてもらうことが、一番大事だと思いますし、今の目標ですね。それができて、初めてスタートラインに立てると思うので。

 中国では、役者のほかにも、トップ視聴率を獲得するようなバラエティ番組の司会をさせて頂いたり、運良く有名になることができましたが、31歳の時に一人で中国に渡って俳優としてやっていく決断をした時は、相当、勇気がいりましたよ。まともな人なら行きませんよ(笑)。

 でも、日本で俳優をしていても鳴かず飛ばずでしたからね。森田健作さんの付き人をしていたんですが、テレビ局とかについていったのは、最初の1年。そのあと、参議院に立候補されたので、あとは、ずっと永田町でした(笑)。

 スーツを着て、ネクタイを締めていました。自分のやりたいと思っていたことと違う世界に足を踏み入れることになって、葛藤はありましたよ。このままでいいのかなって。当時は20代で一番多感な時期、その時に付き人として師匠のために尽くすってことは、本当にキツかった。

 ただ、辞めるのは、明日辞めるといえばいいだけで、いつでもできる。でも、難しいことはそれをやり続けるということ。だったら、難しいほうを選ぼうと思ったんですよ。まあ、自分で無理に納得していた部分もあったかもしれません。

■変えたいという気持ちを持っていなければ、チャンスも巡ってこないと思うんです

 そんな時に、たまたま中国でのドラマのオファーがあって、これを突破口にするしかないなと思ったんです。変えたい変えたいと思っていても、すぐに変えられるものではない。それでも変えたいという気持ちを持っていなければ、チャンスも巡ってこないと思うんです。

 僕にとっては、これが最後のチャンスだなと思って、中国に渡る決断をしたんです。ただ、最初の1年は暗い生活でしたね。オーディションを受けようと思っても、中国語がしゃべれない。仕事もないし、友達もいない。唯一の楽しみは、月に1回、近所にあった日本料理屋でイカ丼を食べるぐらいでしたよ。

 もどかしい毎日でしたが、唯一の中国人の友達が、日本語も話せて、いろんな人を紹介してくれた。彼を通して、知り合いが増えていって、仕事ができるようになっていきましたね。

 仕事が増えたとはいっても、中国で、日本人の役者の仕事というと“鬼子”という役がほとんどなんです。日本人に対する蔑称なんですが、要は、歴史ドラマのなかでの鬼畜な軍人役。

 葛藤を感じていましたね。生活をするためにはお金も必要だし、有名になるためにはしょうがない。そう言い聞かせようと思ったんですが、もっとポリシーを持って仕事をしていかなければならないなって思いに変わっていったんですよ。自分に疑問を感じたら、思い切って行動していくというのも大事だと思います。

 結果的に、鬼子役を辞めた直後は仕事が減ってしまったんですが、徐々に、鬼子ではない役での仕事の話ももらえるようになって、中国のみなさんに顔を覚えてもらえるようになった。

 そのまま中国で、俳優を続けるという選択肢もあったんですが、僕は目指すべき目標があって、それに向かって挑戦していたいんです。それで、日本に戻ってきたんです。

 もはや、意地ですよ。自分で決断したことは、納得のいく結果が出るまでとことんまでやり尽くす。簡単に言えば、負けず嫌いな性分なんでしょうね。

 そのためにも、日本で一人でも多くの人に名前を覚えてもらって、一日でも早くスタート地点に立ちたいなと思っています。

矢野浩二(やの・こうじ)
1970年1月21日、大阪府生まれ。高校卒業後に役者になるべく上京。森田健作の付き人を8年務めた後に、単身中国へ渡る。日本人の軍人役として数々のドラマに出演し、有名に。06年からは、バラエティ番組などにも出演するようになり、幅広い役柄をこなすようになる。11年には『人民日報』主催『2010 Awards of the year』で“最優秀外国人俳優賞”を日本人として初めて受賞。15年には、日中の相互理解促進に貢献したとの理由で、日本の外務省より平成27年度外務大臣表彰が発表された。近年は、ドラマ『警視庁・捜査一課長season3』などに出演。その他、ネット番組『SPECサーガ完結篇SICK’S』(Paravi)に陳役にて出演中。

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