『43回の殺意』が最有力? 傑作ぞろい「ノンフィクション本大賞2018」を占う! (2/3ページ)

日刊大衆

 そこにあるのは、少年たちはもちろん、周囲の大人たちも含めて、誰もが抱えるままならない日常に焦燥や葛藤を抱き、よりどころを求める姿だ。

 この本は、かけがえのない命を奪った事件の発火点が、誰にでも起こりうるという現実を突きつける。著者の石井光太氏は、国内外の貧困、災害、事件などをテーマに多くの著作を持つが、少年事件のルポルタージュはこれが初となる。

 悲劇を繰り返さぬよう、事件や事故をテーマにしたノミネート作品は他にもある。

『軌道 福知山線脱線事故 JR西日本を変えた闘い』(松本創/東洋経済新報社)は、妻と実妹を失った遺族と、事故後にJR西日本社長に就任した山崎正夫氏が、相反する立場から巨大組織改編のために闘った足跡を描く、再生の書。

 そして『日航123便墜落の新事実 目撃証言から真相に迫る』(青山透子/河出書房新社)は、1985年に起こった日航ジャンボ機の御巣鷹山墜落の真実に迫っている。

今年大きな話題となった作品もノミネート

 また、今回の賞には、最近大きな話題となったノンフィクション作品の1つ、『一発屋芸人列伝』(山田ルイ53世/新潮社)もノミネートされた。

 ジョイマン、ムーディ勝山、波田陽区ら、「一発屋」芸人たちのその後を、同じく「一発」を打ち上げた髭男爵 山田ルイ53世が取材し、彼らの本音を明らかにする。同作は「第24回編集者が選ぶ雑誌ジャーナリズム賞」作品賞も受賞している、泣けて笑える良作だ。

 受賞歴から注目したいのは、角幡唯介氏の『極夜行』(文藝春秋)。北極で起こる太陽が昇らない現象「極夜」に身を置き、4か月を過ごす探検系ノンフィクションだ。著者の角幡氏には、これまで開高健ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞など、数々の受賞歴がある。漆黒の闇の中で抱く焦りや絶望、時としてこぼれるユーモアは、読者にリアルな追体験をさせてくれる。

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