たとえ右目に矢が刺さろうとも――武士が生命より大切なもの、鎌倉権五郎景正の武勇伝 (2/3ページ)

Japaaan

助けようとした伯父さんに!?

『絵本写宝袋武者尽』より、鎌倉権五郎景正。明和三1766年

さて、意気揚々と戻ってきた権五郎の姿を見て、伯父にあたる三浦平太郎為次(みうらの へいたろうためつぐ)は血相を変えて驚きました。

「お前、目に矢が刺さっているじゃないか!待ってろ、今すぐ抜いてやるからな!」

と権五郎を寝かせるや、両手で矢柄(やがら。矢の胴部分)をつかみ、権五郎の顔に足をかけて抜こうとします。

すると、権五郎はいきなり抜刀、平太郎の草摺(くさずり。鎧の太ももを保護する部分)目掛けて突きかかりました。

「この野郎、いきなり何をするんだっ!」

平太郎が怒るのも当然です。なにしろ、助けて(矢を抜いて)あげようとしたら急にキレて襲ってくるなんて、とっさによけたからいいものの、一つ間違えば同士討ちです。

しかし、権五郎にも言い分がありました。

武士の本望と尊厳

「武士が矢に当たって死ぬのは本望(仕方ない)。だが、顔を土足で踏まれるのは耐え難い恥辱。かくなる上はお前を斬る!」

たとえ自分の生命が危機にあろうと、武士の尊厳はそれ以上に大切なもの。

これには平太郎も返す言葉がなく、

「お前の言い分はもっともだ。助けたい一心で無礼をしてしまった事は許して欲しい。ともあれ矢を抜かせておくれ」

と謝って、今度はきちんと右目の矢を抜いてあげたのでした。

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