鈴木亮平『西郷どん』で挑む「弱い西郷隆盛」

日刊大衆

鈴木亮平『西郷どん』で挑む「弱い西郷隆盛」

 明治維新150周年ということで、その流れを骨太に描いてきた今年の大河ドラマ西郷どん』。鈴木亮平(35)が演じる西郷隆盛(吉之助)を中心とした偉人たちの活躍に胸踊るシーンが多いが、10月13日の放送でついに明治維新を描いた「革命編」が完結し、いよいよ新章に突入する。ここではその放送内容から、最終章「明治編」の注目ポイントを考えてみたい。

 江戸城無血開城の後も、新政府軍に対する諸藩の抵抗が続き、援軍を要請するため吉之助は薩摩に戻った。そして家を守り続けている吉二郎(渡部豪太/32)に感謝の言葉を述べる。しかし吉二郎は吉之助の勇姿に、自身も戦場に行きたいという思いを強くしていた。そんな中、吉之助の妹である琴(桜庭ななみ/25)が西郷家を訪れ、吉之助にいつも苦労をさせてきた吉二郎にお礼をすべきだと促してきた。すると吉二郎は吉之助に出兵を願い出て、妻である園(柏木由紀/27)も頭を下げる。そして吉二郎の出兵が許されることになったが、その先には悲しい別れが待っていた……。

 印象的だったのはこの放送回の「傷だらけの維新」というタイトルだ。吉二郎の壮絶な死が描かれたが、これ以外にも吉之助が戦に疲弊し、その惨状を憂う姿が心に残った。どうも『西郷どん』では、西郷吉之助が「もの悲しい男」として描かれることが多く、ヒーローらしくないのが特徴だ。

 江戸城を無血開城に導いた後も、吉之助には天下の英雄というよりは国を憂う哀しい男、という雰囲気がある。「傷だらけの維新」というタイトルは本作を、そして西郷吉之助自身を象徴する言葉といえるだろう。しかし、歴史の教科書では明治維新最大の英雄として伝えられてきた西郷隆盛(吉之助)を、このように哀愁たっぷりに描くのはなぜなのだろう?

■苦悩する西郷隆盛に注目したい!

 それはズバリ、『西郷どん』が世間の人たちが抱いてきた西郷隆盛のイメージを、打ち破ろうとしているからではないだろうか。これまでも鈴木亮平が演じる西郷吉之助は、月照(尾上菊之助/41)と入水後に自分だけ生き残ったことを思い悩んだり、二度の島流しで自暴自棄になるなど、人間の弱さを見せてきた。この弱さや物悲しさこそ、『西郷どん』が描く西郷隆盛の特徴なのだ。

 『西郷どん』は吉之助に、苦悩や悲しみに満ちた表情を連発させてきた。そのことで従来の西郷隆盛のイメージを壊し、より人間味を感じられるキャラクターを作り上げたのだ。西郷隆盛を主人公にしながらただの英雄譚で終わらず、西郷や周囲の人々のさまざまな苦悩、葛藤を描くことこそ『西郷どん』のメインテーマなのである。

 ネタバレを覚悟でいうならば、これから明治六年の政変で西郷隆盛は明治政府から退いて下野し、薩摩に戻る。さらに、西南戦争で西郷は新政府軍と衝突する士族軍の総大将になるが、破れたあげく、最後は自決に追い込まれてしまう。つまり「明治編」はこのドラマの主人公、西郷隆盛にとって、敗北の連続となるのだ。鈴木亮平が演じる西郷どんが、この苦しくつらい運命をどのように受け止め、どんな表情を見せるか、それがこれから最終回へ向けての注目ポイントだろう。これまで以上に哀愁が漂う、鈴木亮平の演技に期待したい。(ドラマライター・半澤則吉)

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