やくみつるの「シネマ小言主義」 ★実力以上に見せなければ存在できない男の話 『嘘はフィクサーのはじまり』 (1/2ページ)

週刊実話

やくみつるの「シネマ小言主義」 ★実力以上に見せなければ存在できない男の話 『嘘はフィクサーのはじまり』

 フィクサーというと、狡猾で損得勘定に長け、人脈をツテに大物や利権に取り入って、ひと儲けを企むギラギラした輩、というイメージがあります。

 でも、リチャード・ギア演じる本作の主人公、ノーマンは違うんですね。ニューヨークを牛耳るユダヤの上流社会に何とか食い込もうと、その場しのぎの「ちょっと盛った作り話」で利権のまわりをウロチョロするだけの「自称」大物フィクサーです。

 まず風体からして、ハンチング帽をキッチリかぶり、くたびれたショルダーバッグを斜めがけした、いかにも小市民風の初老の男。所かまわずスマホで妄想の入った儲け話をまくし立てているものの、とても儲かっているとは思えないところが、憎めません。

 それでも、ひょんなことから、イスラエルの大物政治家に取り入ることに成功し、その人物がイスラエルの首相になってしまうことから、念願だったユダヤ上流社会への扉が一気に開かれます。

 ユダヤ社会というと、金儲けの達人だとか、アメリカの政治・経済・エンタメ界を影で牛耳る同族ネットワークだとかを小耳に挟むだけ。深みまでは、なかなか分かり得ないのですが、トランプ大統領のイスラエルへの過剰な肩入れを見聞きするにつれ、関心はありました。タイムリーにも、その一端を、シニカルな視点で描いたこの映画で垣間見ることができます。

 何しろ、「首相のプライベートな友人」というお墨付きができたとたん、今まで無視され続けてきた超大物たちが、自分からウヨウヨと近付いてくるのですから。だからといって、それを機にのし上がる才覚もなく、利用したいだけの男たちと、実力以上の儲け話に振り回されるばかりのノーマン。まさにドタバタ喜劇です。

 “日本にもそういうフィクサーっているのかなぁ”と考えていましたら、思い当たったのが相撲界です。

 今、引退劇でお騒がせの貴乃花。現役時代の彼に取り入って、相撲協会の役員になり、資金をめぐって裁判沙汰になっている輩がいますね。相撲界も大きな利権ですから、狙われるんでしょう。貴乃花もガードが堅いようで、どう見ても怪しい人物にやすやすと騙されている。

 とはいえ、今話題のZOZOの前澤社長なんかは、政財界や旧体制への根回しなどとは無縁で、あそこまでのし上がった模様。

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