きっかけは小学校教師が貧しい子供たちの話をしたことだった。そこから飛行機内で広がるやさしさの連鎖(アメリカ)
今年6月、アメリカで両親に会うために国内便に乗っていた女性が、思いもよらない人の善意の輪の広がりに感動を覚えた。
その女性は、貧しい家の子どもたちが通うイリノイ州の小学校で教師をしており、仕事や学校の話を隣の乗客に話した。
すると、その話を聞いた近くの座席にいる人々が子供たちへと寄付をしてくれたのだ。
機内で広がった善意の輪に感激した彼女は、この奇跡的な出来事をフェイスブックでシェア。そのエピソードはネット上で更に拡散されていった。
・飛行機で隣だった男性に職場の話をした教師
その日、キンバー・バーミューデスさんは休暇を使ってアメリカのフロリダ州にいる両親を訪ねるために飛行機に乗り、隣に座っていた優しそうな男性と会話を始めた。
フロリダ州で教師をしているキンバーさん(右)
話の流れで男性に職業を聞かれたキンバーさんは、学校の教師であることを明かし、その仕事について語り始めた。
キンバーさんはイリノイ州シカゴ市内のアボンデール地区にあるカルロス・フエンテス小学校というチャーター・スクール(特別認可学校)の教師だ。
教師の仕事が大好きで子どもたちの教育にも熱心な彼女は、聞き役になってくれた男性に自分の職場や生徒たちのことをたくさん話した。
・貧しい家庭の子どもたちが通う学校
そのうち、ずっと耳を傾けていた男性が「あなたが仕事で一番きついと感じるのは何ですか?」と質問してきたので、彼女はつらい体験を正直に告白した。
彼女の職場は一般的な学校とは違い、生徒は経済的に貧しい家族の子どもばかりだった。
主に低所得者層が暮らす地域にあるその学校では、消耗品すら買えない家の子やホームレスの子もいる。教師が自分のお金で生徒に必要な物の購入を援助することもある。
それは下着や石鹸や学校の道具など、本当に必要最低限のものばかりだ。
男性にそう事情を説明したキンバーさんは、お腹を空かせた生徒が登校するときや、家族の生活必需品のために苦労して働く両親を見ていると悲痛な思いに駆られます、と打ち明けた。
・隣の男性が寄付を!?そこから思いがけない展開に
その後、彼女は男性と、この時代になっても飢える子どもや、必要なものが得られない子どもがまだいる現状を語りあい「子どもたちはそんな境遇に置かれるべきではない」という意見を述べたりした。
すると今度はその男性が、自分が経営する会社はあなたが勤務してるような学校によく物品を寄付しているので、もう少し詳しく教えて下さい、と申し出た。
その時のことをキンバーさんはこう語っている。
「本当に思いがけないことでした。それで学校のメールアドレスをその男性に教えました。でもそのあとさらに信じられないことが続いたんです」
なんと、後ろの席の男性が彼女の肩を叩いて話しかけてきたのだ。
・後ろに座っていた男性がお金を!
「彼は、申し訳ない、つい話を聞いてしまって…と丁寧に詫びつつ、お金を渡してきたんです。その時の私は混乱して状況を理解しようとしてました」
後ろの男性はあわてる彼女にこう言った。
「君の話を聞いて。つまり、何か素晴らしいことをしなさいってこと」
とだけ言うと、何事もなかったように自分の席に深々と腰掛けた。
こんなことが起こるなんて!
見知らぬ人の善意が身に染みて、キンバーさんは泣き出していた。その時点で正確な金額はわからなかったが、彼が彼女に手渡したのは数枚の100ドル札だった。
彼女はその男性に「ありがとうございます!このお金で生徒の本を買って、貧しい地域に還元します!」と泣きながら感謝した。
・着陸後も善意の寄付金が次々と!
しかもこの話にはまだ続きがある。
飛行機が着陸してキンバーさんが立ち上がると、通路を挟んだ隣の男性が彼女に、たいしたお金持ってないけど…、と20ドルを渡してきた。
それだけでもう胸がいっぱいだったキンバーさん。だが今度は前の席に座っていた男性が彼女に振り向くと、今持ってる現金これだけだった、と10ドルを渡してきたのだ。
「もう機内で号泣してました。そして善意の4人全員に、子どもたちのために素晴らしいことをします!と言いました。私はお金目当てで話をしたわけでもないし、手荷物以外の何かをもらって飛行機を降りるつもりも全くなかったんです」
その後、両親の家に向かう途中でお金を数えてみると、総額は530ドル(約6万円)もあり、普段あまり現金を持ち歩かないキンバーさんは目の前の大金に動揺しながらあらためて感謝した。
・「困っている誰かを助ける行動」につなげたい
彼女はインタビューで、このお金が生徒たちの学校生活を変えるだろうと語っている。
「資金が増えれば、私も子どもたちもより多くのことができます。以前はただ途方に暮れてましたが、今はこの信じがたい出来事に驚いて感動してます」
この出来事を綴った彼女のフェイスブックの投稿は4万以上ものいいねがつき、2万6千回もシェアされている。
「私はこの投稿が、誰かが困っている誰かを助ける行いにつながることを望んでいます。特に困っている子どもたちの援助に。それはシカゴの学校でなくてもいいし、どんなにささいなことでもいいんです」
彼女はこのお金で生徒の本やカバンや学校用品を購入する。特に本は足らなかったので、読書を始めた生徒たちの分を買ったり、読ませたい良書もそろえる。
キンバーさんはチャータースクールへの寄付の呼びかけも始めている
・善良な人はいつだってそこにいる
また彼女は、機内で出会った見ず知らずの寛大な人々に感謝の気持ちを伝えるだけでなく、投稿のシェアで彼らの思いを広めるつもりだ。
「あまりに衝撃的な出来事で、今は畏怖の念まで抱いてます。たとえ世の中がおかしくなってるように見えても善良な人はいつだってそこにいるものです」
最後にキンバーさんはこう話している。
「私は生徒のために何かをします。それからあの恩人たちを思いっきり抱きしめて感謝を伝えたい。私はあの素晴らしい4人の名前を知りませんが、彼らはたくさんの人に認められるべき人々です」
アメリカでは貧富の差が広がっており、貧しい家庭は増えるばかりだ。ニューヨークの公立学校では10人に1人がホームレスだという。
・ニューヨーク市の公立学校の学生の約10人に1人がホームレスであることが判明(アメリカ) : カラパイア
やさしさは連鎖する。子供たちの現状を良く知る人が動くことで、少しずつ何かが変わっていくのかもしれない。
References:nbcchicago / facebookなど /written by D/ edited by parumo