とある武士が自分の腹を切り命懸けで守り抜いた血みどろの家系図「チケンマロカシ」とは? (2/5ページ)
自分が恥ずべき振舞いに及べば、それは自分個人でなく、一族郎党や祖先の名誉を損ない、ひいては子孫たちにまで迷惑をかけてしまう……そんな想いが、武士たちの振舞いに独自の美徳と道理を備わせました。
さて、今回はそんな家系図にまつわる、とある武士の壮絶なエピソードを紹介したいと思います。
人呼んで「チケンマロカシ」……「血みどろの巻物」という意味です。
焼け落ちる館と、殿様の心残り
「目黒行人坂火事絵」より。
昔むかし、岩城国宇多郡中村(現:福島県相馬市)には、鎌倉時代から相馬(そうま)氏という大名がいました。
いつの事か定かではありませんが、ある時、この相馬氏の館が大火事で焼けてしまいました。
不幸中の幸い、死傷者は出なかったそうですが、相馬の殿様は言います。
「家や財産はまた用意すればいいから、焼けてしまっても気にしない。ただ、我が家の大切な宝であった先祖代々の家系図だけは心残りだなぁ……」
【原文】「家居も器材も追附(おっつけ)作りて出来るものなれば、残らず焼いて苦しからず候。然れども當家(とうけ)第一の重寶の系圖を取り出さゞる事残念なり」
この時代、コピーなんて当然ありませんから、手間暇かけて書写していなければ、それが焼けたらそれっきり。

相馬氏の祖・千葉常胤像。