食事の前後にちゃんと言ってる?「いただきます」「ごちそうさま」の本当の意味

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食事の前後にちゃんと言ってる?「いただきます」「ごちそうさま」の本当の意味

最近、学校で給食のとき「いただきます」「ごちそうさま」を言わせることに対して、クレームをつける親御さんがいらっしゃるそうで。何でも「ウチはきちんと給食費を払っているのだから……」とのことで、お話を伺ってみると、どうやら「いただきます」「ごちそうさま」という言葉を、

「誰かにおごってもらった=自分がおカネを出していない時、おごってくれた相手に対して使うもの」

だと思っている節があることに気づきました。だから、自分がおカネを出している時は誰にも気がねすることなく、堂々と食べていい。

……いえいえ、そういうことではないのです。

今回は食事の前と後に言う「いただきます」「ごちそうさま」という言葉のもつ、本来の意味について紹介したいと思います。

あなたは何を「いただきます」か?

ヨ―スト・アンマン「屠殺業者とその召使」16世紀。

まず、食事の前に言う「いただきます」は、誰から何をいただくのでしょうか。

「そりゃ、おごってくれた人から食事をいただくんでしょ?」

そんな答えもありましたが、それはあくまでもおまけに過ぎず、ここで大切なのは、あなたと食べ物の関係性です。あなたが口にする食べ物は、どれ一つとして例外なく「かつて生きていたもの」です。

あなたがその手で「殺したか」否かはともかく、あなたが何かを食べるとき、その何かは「あなたのために」殺されています。つまり、あなたがいつもいただいているのはに他なりません。

ですから、あなたが何かを食べる時は、誰がおカネを出そうと出すまいと、誰がいようといまいと、あなたが食べようとしている命と向き合い「いただきます」と言うのが正しい在り方です。

もちろん、おごってくれたお礼も言うべきですが、まとめて「いただきます」と言うにしても、それぞれに気持ちが向けられていることが大切です。

「ごちそうさま」で、頂けました。

次に、食後に言う「ごちそうさま」を漢字で書くと「御馳走様」となります。馳・走とはそれぞれ走ることを表し、組み合わせて「かけずり回る」こと、転じて手間ヒマを意味します。

食べ物があなたの口まで勝手に飛込んで来てくれればいいのですが、「棚から牡丹餅」じゃあるまいし、そんなうまい話はありません。

となれば当然、食べ物があなたの口に入るまで、つまり「生き物が食べ物に変えられる」までにいくつかのプロセスがあるわけで、それをあなたがしていなければ、代わりに誰かがやっているのです。

「生き物」を殺して食べやすい「食材」に加工し、そして「食べ物」に調理して……ごく簡単ながら、これらのプロセスこそ「馳走」に他ならず、その苦労に対して「御馳走様(ごちそうさま)」と感謝を示すのです。

よく、何かよかったことに対して「お陰様」と言うように「御馳走様で、頂くことができました」と言うのが、本来の用法となります。

まとめ・食事は神≒自然の恵み

斎庭の稲穂の御神勅。天照大御神が天孫に稲穂を授ける様子。

以上、「いただきます」と「ごちそうさま」の意味について紹介して来ましたが、最後に江戸時代の学者・本居宣長(もとおり のりなが)の詠んだ食前食後の歌を紹介したいと思います。

「たなつもの 百(もも)の木草(きぐさ)も 天照(あまてら)す 日の大神の 恵(めぐみ)得てこそ」

「たなつもの」とは「田のもの、種からとれるもの」つまり日本人の主食であるお米(稲)を意味し、その他たくさんの収穫物(百の木草)はすべて、天から万物を照らす太陽の神様=天照大御神(アマテラスオオミカミ)の恵みなのだ、というメッセージです。

「朝宵(あさよい)に もの食うごとに 豊受(とよう)けの 神の恵みを 思え世の人」

昔は朝と夕の一日二食が基本でした。豊受の神とは伊勢の神宮(外宮)はじめ、全国各地でお祀りされている食べ物の神様・豊受大神(トヨウケノオオカミ)のことです。

これらに共通するのは「人間が生かされているのは、すべて神様≒自然の恵みあってこそ」という教訓です。

いくらお金があったって、食べるものが自然からとれなければ人間は生きられません。

世の中が便利になって、自分で食べ物を調達する機会が少なくなったことで「おカネさえ出せば、何でも好きなだけ手に入る」という傲慢さに警鐘を鳴らし続ける言葉として、日々食事の前後に行われる

「いただきます」

「ごちそうさま」

の正しい意味を次世代に受け継いでいくことこそ私たち大人の務めであり、子供たちへの愛情だと思うのです。

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