ダークマター検出に朗報。地球に吹きすさぶ星々の嵐がダークマターの観測を可能とするかも!?(スペイン研究)

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ダークマター検出に朗報。地球に吹きすさぶ星々の嵐がダークマターの観測を可能とするかも!?(スペイン研究)
ダークマター検出に朗報。地球に吹きすさぶ星々の嵐がダークマターの観測を可能とするかも!?(スペイン研究)


 ダークマター(暗黒物質)は、天文学的現象を説明するために考えだされた「質量は持つが、光学的に直接観測できない」とされる、仮説上の物質である。

 存在を示唆する間接的な観測事実は増えているものの、その正体は未だ不明である。

 だがもしかしたらダークマターの秘密に迫れるかもしれない。

 科学者によると、現在太陽系は、ダークマターの”嵐”の中を通過している可能性があるそうで、ここ地球からそれを検出できるかもしれないそうだ。

・秒速500キロで地球に向かって吹きすさぶS1ストリーム

 スペイン、サラゴサ大学のキーラン・オヘア氏らの研究では、「S1ストリーム」と呼ばれる同じ方向に移動する星々を調査した。

 3万の星々で構成されるS1ストリームは、昨年、欧州宇宙機関の探査機ガイアによって発見された。

 そのようなストリームは、これまで天の川銀河の中で30ほど発見されており、数十億年前に天の川によって飲み込まれた矮小銀河の名残りだと考えられている。

 しかしS1は特に面白い。今現在、秒速500キロで地球に向かって吹き付けてきているからだ。

 研究者によると、この嵐が地球の周囲に存在するダークマター(質量はあるが、光学的には観測できない仮説上の物質)に影響を与えることで、将来的にそれを観測できるようになるかもしれないという。

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image credit:NASA

・S1ストリームが作り出すリング
 
 あらゆる銀河は、ダークマターの巨大なハローの中に形成されたと考えられている。だが、それらは目で見ることはできないし、通常の物質と干渉し合うこともない。

 ところが、研究チームは、矮小銀河に由来すると考えられる太陽の100億倍という質量のダークマターが、S1に沿って移動していることに気がついた。

 「S1ストリームが”太陽系の顔をひっぱたく際”、その反対方向に回転する構造によって、標準的なダークマター風と同じ空の一画からやってきていると思われるダークマターの量が劇的に増加する。」

 「それはこの風の周囲にはっきりとした”リング状”の構造を作り出すはずだ。これは、指向性ダークマター検出器なら……将来的には容易に発見できるだろうものである」と科学者らは述べている。

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image credit:NASA/JPL-Caltech

・次世代の検出器が理論上の粒子アクシオンを検出

 次世代の検出器なら、理論上ストリームからのアクシオンを(電子より5億倍軽く、ダークマターを構成する可能性があるとされる理論上の粒子)検出できるかもしれない。

 これらの超軽量粒子は、我々には見えないものの、強力な磁場が存在すれば、目に見える光子に変換される可能性があるからだ。

 これまで多大な努力が払われたにもかかわらず、ダークマターが直接観察されたことはない。しかし、今吹き付けてきている嵐が絶好のチャンスをもたらしてくれるかもしれない。

 この研究は『Physical Review D』に掲載された。

References:cosmosmagazine/ written by hiroching / edited by parumo
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