「最初から出し切る」。西川征克、イングランド相手に7番の責任果たす。

ラグビーリパブリック

トゥイッケナムでの前日練習でCTB中村亮土(左)と一緒に写真に収まるFL西川征克。(撮影/出村謙知)

 トゥイッケナムでテストマッチを戦う。

「最初で最後」(FLリーチ マイケル主将)

 そんな夢舞台が現実になることが決まったのは、約1年2か月前。

 その時に、リーチ主将自体は自らがラグビーの聖地でプレーする自分の姿をある程度、思い描くことができたのは確かだろう。

 ただし、同じFLの相棒がキャップ数わずか1、かつイングランド?日本戦が決まった2017年9月時点では、ジャパンでのプレー経験がゼロだった三十路男になるとは、想像だにしなかったのではないか。

 もちろん、それは桜のジャージに「7」を背負って全世界のラグビーマンの憧れの地に立つことになる本人にとっても同じだ。

「初めてのトゥイッケナムの試合。楽しみだが、まだ実感が湧かない。8万人の前でやったこともないし、どんな感じなのかわからない」

 西川征克、31歳。先発FW8人の中で最年長のバックローを“シンデレラ・ボーイ”と呼ぶには抵抗があるし、日本のラグビーファンなら、その仕事人ぶりに関して大抵は理解しているはずだ。

 それでも、1年2か月前に西川がひと桁の背番号をつけてトゥイッケナムでプレーすることを想像できていた人は、本人を含めて皆無だろう。

 何しろ、その時点ではNDSのトレーニングスコッドにも選ばれておらず、現在までに日本代表としてプレーしたのは、わずかに40分間だけなのだ(本年6月のジョージア戦後半に途中出場)。

「タックル、ブレイクダウン、走る」

 リーチ主将はイングランドに勝つためのポイントとして3つのポイントを挙げたが、それはつまりトゥイッケナムが日本代表として初先発の場となる西川がキープレーヤーだということでもある。

 もちろん、本人にもその自覚はある。

「フランカーとして先頭に立って、タックルだったり、セカンドマンとしての働きだったり、やっていかないと。チームとしても、そこはフォーカスしている。7番として相手のフィジカルをシャットダウンする。最初から出し切る」

 多くの日本代表選手にとって、イングランド戦は“敵将”を意識する戦いにもなるが、31歳にして桜のジャージにたどり着いた遅咲きFW第3列にとっても、“エディーさん”は特別な人。

「(サントリーに入って)1、2年目はエディーさんが監督をやっていた。正直、いい印象はない。僕を育てようとしてたけど、コテンパンにやられた。全部が怖かった。試合が終わったあと、電話かかってくる。その電話に出るのが、一番怖かった。『なんでー』って始まって…」

 おそらく、「5メートルのブレイクダウンを毎日やらされた」という前日本代表HC流の猛練習がなければ、31歳にして代表初先発をトゥイッケナムで迎えるというシンデレラ・オールドボーイにはなれなかっただろう。

「全部が怖かった」という“恩師”が日本代表HC時代にはジャパンには呼ばれずに、その恩師を敵に回して聖地で暴れるチャンスがめぐってきたのも因縁といえば因縁。

「一生に一度」

 最近よく耳にするフレーズだが、西川征克にとって2018年11月17日のトゥイッケナムは、そんな最高潮を迎える瞬間であり、場所となる。

(文/出村謙知)
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