本好きのリビドー(232) (2/2ページ)
その平蔵をはじめ、火附盗賊改の知られざる実態と活躍を、江戸時代の資料をもとに解き明かしたノンフィクションが、この『「火附盗賊改」の正体 幕府と盗賊の三百年戦争』(集英社新書/760円+税)だ。
長谷川平蔵は延べ200人超いた火附盗賊改の中でも在任期間が最も長く、200件に及ぶ検挙の実績を上げた名捜査官である。そして、火附盗賊改は奉行所と違い、場合によっては犯罪者をその場で斬り捨てることが許可されていた。なぜなら取り締まりの対象となったのが、盗賊や放火犯といった凶悪な犯罪者たちだったからである。
その残忍非道な者たちに立ち向かう火附盗賊改の部隊員たちも、腕に覚えありの強者ぞろいだった。本書では、当時の警察の精鋭部隊と盗賊一味の捕物の一部始終や、苛烈を極めた詮議の様子などが生々しく語られ、さながら刑事ドラマを見ているようなワクワク感が満載だ。
著者は歴史作家の丹野顯氏。江戸庶民の生活史を専門としているだけに、生き生きと、かつ詳細に力強く、江戸の治安維持に活躍した人々を現代によみがえらせている。
(小林明/編集プロダクション『ディラナダチ』代表)