ホームレス男性の診察が終わるまで、入り口で心配そうに見守っていた4匹の犬たち(ブラジル)
心無い人間に虐げられる犬の悲しいニュースはさまざまな国で問題になっているが、今月初め、貧しくても犬たちと素晴らしい関係を築いている男性のエピソードが大反響を呼んでいる。
先日、ブラジル・サンタカタリーナ州の病院で夜勤をしていた看護師のクリスさんは思いがけない形で心が震える光景に遭遇した。
深夜にたった一人でやってきたホームレスの男性。
その姿を見て「孤独な患者」とばかり思った彼女だが、すぐにそれが思い違いだったことを知る。実は彼にはたくさんの頼もしい付き添いがいたのだ。
・病院を一人で訪れたホームレスの男性
その日の午前3時ごろ、クリス・マンプリムさんが同僚と夜勤をしていると、セザルというホームレスの男性が訪れて持病の診察と薬の処方を申し込んだ。
夜勤をしていたフェイスブックユーザーのクリスさん
image credit:Cris Mamprim/Hospital Regional Alto Vale
セザルさんはこの病院は初めてで、クリスさんが健康状態などを問診した。
夜更けに一人でやってきたセザルさんは寂しそうに見えた。しかし次の瞬間、クリスさんはそれが思い込みだったことを知る。
・セザルさんに付き添い、辛抱強く待ち続けた犬たち
ふと見ると入口で立ち止まり、セザルさんを一心に見つめる4匹の犬がいた。なんと彼は犬の付き添いを伴っていたのだ。
セザルさんは貧しい暮らしをしているが、たくさんの犬友だちに恵まれていたのだ。犬たちは病院まで付き添い、玄関前で大好きな彼の帰りをけなげに待っている。
セザルさんを待っていた犬たち
image credit:Cris Mamprim
・犬たちに食べ物を分け与えきちんと面倒をみていたセザルさん
驚いたクリスさんはセザルさんと話すうち、彼がいかに犬たちを大切にしているかを知った。なんと彼は食べ物をほとんど食べずに犬たちに与えていたのだ。
「その犬たちはきちんとお世話されていて健康そうで、ぽっちゃりしてる子もいました。その全員がドアのところで待ってたんです。セザルさんをとても心配してるのが手に取るようにわかりました」
犬たちはそこからほとんど動かずに、彼の診察と薬の処方までの数十分を辛抱強く待っていた。
image credit:Cris Mamprim
そしてようやくセザルさんの診察が終わった。
おとなしく入り口で待つ犬たちの様子をずっと見ていたクリスさんは、同僚と話し合い、お行儀の良い彼らを招き入れる許可をもらった。
そして、セザルさんと犬たちみんなに手持ちの食べ物をふるまったのだ。
セザルさんと犬たち
image credit:Ana Paula Bogo
・貧しくても愛がある。幸せそうなセザルさんと犬たち
そして1時間後、セザルさんは楽しそうに尾を振る犬たちと一緒に病院を去っていった。クリスさんは万感の思いで彼らを見送った。
「私はセザルさんの半生を知りませんし、どんな事情でホームレスになったかもわかりません。でも犬たちに慕われて愛されている彼に尊敬の念を抱きました」
自身も動物好きなクリスさんは、心無い人の犬への虐待に心を痛めてきた。
だが、この日で出会った犬たちのいきいきとした表情や、セザルさんへの愛がひしひしと伝わる立ち居振る舞いを見て、その絆の深さに胸を打たれた。
image credit:Ana Paula Bogo, Cris Mamprim
「たとえ貧しい暮らしでも、彼と犬たちはとても幸せそうでした。すべての人が彼のように動物を愛し、動物と通じ合えれば虐待なんて無くなるはずです」
クリスさんがこの出来事をフェイスブックで明かすと8万ものいいねがつき、セザルさんと犬たちの仲睦まじい姿に多くの人が感嘆や称賛の声を寄せている。
自分よりも大切な犬たちを優先する優しいセザルさん。そして犬たちもセザルさんを思い、常にそばに寄り添い彼を守ろうとする。
海外ではひょんなことから普通の人が簡単にホームレスに陥ってしまう人も多い。セザルさんが健康になって、仕事を得て、犬たちと一緒に暮らせる暖かい家が得られることを心より願わずにはいられない。
References:thedodoなど /written by D/ edited by parumo