肩書よりも「あなた」が大切―京都五山の第四位・東福寺にて、和尚と府知事の友情エピソード (2/3ページ)
随分とご無沙汰していたが、やっと和尚に会える。
二人はかねてから交流があったと伝えられますが、もしかしたら、かつて生野の変に敗れ、逃げ込んできた北垣に、敬冲が「慈悲を垂れた」事があったのかも知れません。
ともあれ北垣は従者を連れて、京都五山の第四位・東福寺の山門までやって来ました。
来たのは「大書記官」か「晋太郎」かさて、北垣は従者に、寺へ自分が来たことを伝えさせました。託(ことづか)った従者は、さっそく門前の小僧に伝えます。
「これ小僧、敬冲和尚に『大書記官がいらした』と伝えよ」
「わかりました」
従者に託った小僧は、本堂に上がって敬冲和尚に伝えます。
東福寺・本堂。
「和尚様、門前に『大書記官』様が和尚様を訪ねてお見えです」
それを聞いた敬冲和尚は答えます。
「はて……大書記官?わしにそんなご大層な知り合いはおらんのぅ……うーむ、その御仁には申し訳ないが、あいにく今日は大切な友人と先約があるので、とお断りしなさい」
「わかりました」
小僧は山門へ戻ってその旨を従者に伝え、従者はそれを報告すると、北垣は驚きました。
「そんなバカな。和尚はそのような無体の振舞いをなさる方ではないし、さりとてこちらに不調法があった覚えもないし……いや、待てよ?」
ふと思いついた北垣は馬から下りて、今度は自ら小僧に頼みました。
「のぅ小僧さんや。