錦戸亮『トレース~科捜研の男~』に“あの2作品”の呪縛 (2/2ページ)

日刊大衆

■もっとリアリティがほしい!

 事件の被害者が幼少の頃から母とともに父親に日常的に暴力を受けており、その悲惨な環境が明らかになるが、ポイントになったのが火傷の痕。『アンナチュラル』では、事件を通して登場人物の心情や生きてきた背景、死に向き合うさまが胸を打ったが、『トレース』では鑑定の過程を見せず結果に驚き目を丸くするような演出。これでは単発的な感情に見えてしまう。被害者が生きてきた意味について語る場面があったが、死と向き合う描写が少ないゆえ軽く感じられたのが残念だ。

 新木優子が演じる沢口ノンナが、事件と向き合うことで成長していく過程も楽しみだ。新木は
2018年10月クールのフジ月9『SUITS/スーツ』では有能な女性の役を演じていたが、今回のフレッシュながら着実に経験を積んでいく役は本人のキャリアに重なる部分があって違和感がないので期待したい。

■捜査一課の刑事の個性が強すぎる!

 また、船越英一郎(58)演じる虎丸良平を筆頭に、捜査一課の刑事の個性が強すぎて少々目障りなくらい目立っていた。何より、科捜研を見下した物言いは眉をひそめたくなるし、時代にそぐわないように思えた。頑固だけど正義感が強いという設定は、声を上げたり乱暴なふるまいをしなくても十分演出できるのではないか。科捜研との対比で派手な演出をしているのだとすれば、もっと抑えて科捜研を立てるようなバランスを取ってほしい。

 船越英一郎ならどんなベテラン刑事役でもこなせるのだから、抑えても存在感のある渋くてかっこいい刑事姿が見たかった。

■今後の展開を考察

 事件の背景は重たく被害者に同情の念を禁じえないが、今後の展開に一抹の不安が残った。

 全体的には事件を解決しながら、登場人物の背景に迫っていく展開が予想されるが、このままだとただ事件を解決する刑事ドラマになりかねない。もしくは、新人の成長物語になるかもしれないし、凄惨な事件に心を痛めるだけの作品になってしまっては残念だ。

『科捜研の女』のような、科捜研での鑑定をメインにして鑑定結果から導き出された解決が見届けられるドラマになるのか、『アンナチュラル』のような、死を真剣に考えさせられるような重厚かつ濃密なドラマになるのか……。

 見失われてしまいそうな事件の背景を見つけたり、その結果によって導かれる事件解決が見たい。科捜研をテーマにした作品ならではの面白みをもっと出してほしい。

 とはいえ、ドラマはまだ始まったばかり。第1話は登場人物や設定などの説明をする必要があるから、本質に迫ることは第2話以降になってしまうこともあるだろう。次週に期待したい。

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