犯罪捜査が前進か?エピジェネティックマーカーで年齢や生活習慣、食習慣がまるわかりに(米研究)

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犯罪捜査が前進か?エピジェネティックマーカーで年齢や生活習慣、食習慣がまるわかりに(米研究)
犯罪捜査が前進か?エピジェネティックマーカーで年齢や生活習慣、食習慣がまるわかりに(米研究)


 殺人事件の犯罪現場に残されていた血痕のDNAを正しく鑑定するのは必ずしも簡単ではない。
 
 現在のDNA解析手法はそれほど感度が良くないのだ。そして今、新しい手法が考案されつつある。

 DNAには組織に特有のマーカーがある。それが見つかれば血液細胞由来かあるいは皮膚細胞由来かといった区別も可能になる。

 遺伝子配列というより、DNAの発現の変化を見れば、犯罪の容疑者を特定する情報になりうるというのだ。

・ある殺人事件の裁判

 ある殺人事件の裁判で、専門家として証言を求められたフロリダ国際大学の法化学者ブルース・マッコード氏。

 その事件では、ある女性が離婚してから間もなく殺害され、その遺体から元夫のDNAが採取された。

 だが、血液に由来するこのDNAが、夫の犯行を示唆するものなのか、それとも元夫婦の何気ない接触によって付着したものなのか判断するのは難しく、夫が犯人であるという決定的な証拠にはなりえなかったのである。

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・遺伝子配列ではなく、その発現から情報を得るエピジェネティクス

 法エピジェネティクスではこうした研究が急成長を遂げている。

 エピジェネティクスとは、DNAが持つマーカーを用いて、遺伝子配列そのものというよりは、その発現の変化を見る研究であり、犯罪の容疑者を特定する情報を集めるうえでも有効だと考えられている。
 
 法医学者や警察などは、こうした試みが犯罪捜査の重要なツールになるだろうと期待し、現場に残されていたDNAが人体のどの組織に属していたものなのかといったことや、その人間の年齢やライフスタイルまであばきだせるような手法の開発を進めている。

 これは今まさに研究の真っ最中で、その効果や精度はこれから検証されることになる。

 また研究が進み多くの遺伝情報を扱うツールが実際に登場すれば、倫理的な懸念についても対応しなければならなくなるだろう。


・犯罪現場の科学

 体にあるすべての細胞は同じ遺伝子配列を持っており、その独特な配列は一生を通じて変わることがない。

 ところが、「遺伝子発現」と呼ばれるそうした遺伝子の機能が発揮される態様は、体の部位それぞれによって、さらには環境要因への反応として変化する。

 たとえば、血液細胞と皮膚細胞では果たすべき目的が違っており、それらに応じた役割を遂行するために、両者ではタンパク質が異なる固有のパターンで現れる。

 これらのパターンを特定することで、血液細胞由来のDNAと皮膚細胞由来のDNAとを区別することが可能だ、とマッコード氏は話す。

 このやり方には現在の体液識別プロトコルを超えるアドバンテージがある。
 
 一例として、性的暴行調査キットのぬぐい液を解析するには抜群に便利だ。現時点では仮に被害者から男性のDNAが発見されたとしても、それが皮膚細胞由来なのか、精液由来なのかは不確かだ。

 だがエピジェネティックマーカーに基づく方法ならば、その点についてはっきりした答えを得ることができる。

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・エピジェネティックマーカーから年齢や生活習慣の特定も可能

 細胞の種類だけでなく、加齢による細胞の変化からその人の年齢を3、4年の誤差で予測することもできる。3、4年の誤差があるのは、細胞の加齢が個人によって異なるためだ。

 さらに容疑者が喫煙者かどうか、飲酒量が多いか、食習慣といったものまで予測するヒントになるかもしれない。

 そうした行動はいずれも痕跡を残すものであるため、たとえばその人物が昔からベジタリアンであるといったことを知ることができる。

 こうした情報は1人の個人を特定するには十分なものではない。エピジェネティックマーカーは指紋ではないし、遺伝子発現について依然として分からないことがたくさんあるからだ。

 しかし探し求める人物の年齢の範囲や生活習慣を知ることができれば、容疑者を絞り込む大きな手がかりとなるだろう。

 一方で、しばらく時間が経ち劣化していたり、少量しかないDNAでも情報を得られるのかといった、この手法の限界についてはまだよく分かっていない。

 またどんな民族にも同じように適用できるのか、どの組織に由来するマーカーであっても年齢の特定が可能なのかといった疑問もある。

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・倫理的懸念も

 年齢を特定するエピジェネティックマーカーは別の目的にも利用できるという報告がある。そこから白血病のタイプを特定することができるのだ。

 これは重要な倫理的懸念を提起する――つまり年齢や組織の種類を特定するために使われるマーカーは、医療情報というセンシティブな情報も持っているのだ。

 これによって入手される生活習慣情報も、倫理的なあやを加えるだろう。

 病気や生活習慣によってエピジェネティックマーカーは遺伝子配列には現れないような変化をする。だが、この分野に関する疑問の多くは、より一般的な遺伝情報に関するものと似ている。

 関連技術の信頼やその利便性はもちろんのことだが、そうした情報がどのように収集・使用され、どのように保存されるのかについても気になる。

 また警察などがエピジェネティックツールを実際に利用し始めるにあたっては、手に入れられる情報の限界や、それがどの程度のことを告げているのかということをきちんと理解しておくことが決定的に重要となる。

 科学的手法と聞けば、それは客観的なものという印象を受けるかもしれないが、第三者が解釈するものであり、DNAの中に絶対の真実があるわけではないのである。

 よって集められた情報を誰に、どのように配るのか、きちんと決めておくことが重要となる。

 科学者や警察などは、どのような情報を扱うにしても、その情報を使うメリットとプライバシーとの兼ね合いを考慮しなけばならない。

 技術が市場に出まわる前に倫理的な側面をきちんと考慮しなければならないだろう。

References:DNA evidence could soon tell cops your age, whether you smoke, and what you ate for breakfast | Popular Science/ written by hiroching / edited by parumo
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