あのシャーロット・ランプリングが脱いだ!? まさに『まぼろし』

まいじつ

(C)B-D-S Piotr Marcinski / Shutterstock
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映画評論家・秋本鉄次のシネマ道『ともしび』

配給/彩プロ 2月2日よりシネスイッチ銀座ほかで公開
監督/アンドレア・パラオロ
出演/シャーロット・ランプリングほか

シャーロット・ランプリングといえば、ナチス制服のスレンダーヌードも鮮烈だった『愛の嵐』(74年)がまず目に浮かぶ。その退廃的美しさが印象的だった。この2月5日で73歳だが、21世紀に入っても現役バリバリ。昨年公開されたジェニファー・ローレンスが脱ぎ脱ぎだった『レッド・スパロー』では、スパイ養成学校の監督官役でニコリともしない冷徹な役柄が彼女に似合っていたが、主役で本領発揮は『まぼろし』(00年)、『さざなみ』(15年)、そしてこの新作と続く“邦題ひらかな四文字”シリーズ(?)である。味気ない原題通りが目立つ中、この粋な邦題に配給会社のセンスを感じる。

念のため記するが、この3本に直接の関連性はない。ただ、シャーロット・ランプリング主演で、老夫婦の齟齬や孤独、“夫婦愛”に対するアンチテーゼなどをヒロインの視点からビターに描くという共通項はある。まるで各々の監督が、シャーロットというお題をもらって、前記のテーマを元に競い合っているかのようにも映る。

女優の“スゴみ”を感じる映画

富豪の家で家政婦をしている初老のアンナ(シャーロット・ランプリング)は、夫が突然収監される。何の罪かは分からない。夫が不在の中、頼りの息子には昔から疎まれて取り付く島もない。次第に押し寄せる“社会での孤独”に彼女は何とか堪えようとするが…。

やはり、特筆したいのは彼女の“七十路ヌード”! そりゃもちろん、大いに鑑賞に耐えるわけではない(失礼)。かつての『愛の嵐』の当時に比べれば45年も経過しているのだから、経年劣化は否定できない。それでもなお、数少ない楽しみとしていた会員制プールで期限が切れて拒絶される哀しいシーンの前段で映し出されるその“裸”には、まさしく孤独感が漂っていた…。向こうの女優さんはやっぱり違う。表現のため、テーマを深化させるためには、この齢でもヌードも辞さずなのだ。それが大女優の心意気と言えるのではないか。日本の著名女優の多くはこの姿勢を見習うべき、って昔から言っているんだけどね。

クライマックス、思い詰めたように、地下鉄のホームへと続く階段を下りてゆくシーンで、彼女は何を決断したのか、の緊張感は特筆もの。浜辺に打ち上げられた巨大なクジラの死骸を見つめる、彼女の孤独感を表すシーンもまた強烈なインパクトを残す。

シャーロット・ランプリングという、半世紀も第一線で演じ続ける大女優の覚悟(それはこのヒロインの覚悟にも通じる)が、ヒシヒシと伝わってくる。女優の“スゴみ”を感じる映画とはコレ!

【画像】

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