小手伸也「知識はひとつでも多いほうが、世界が面白く見えますから」“むちゃ”に応える人間力

日刊大衆

小手伸也「知識はひとつでも多いほうが、世界が面白く見えますから」“むちゃ”に応える人間力

 僕、役作りでむちゃぶりされるとうれしいんですよね(笑)。これまでやったことがない芝居や、他の人なら二の足を踏むようなことを要求されるとワクワクする。ドMなんですかね(笑)。

 現在出演中のドラマ『私のおじさん』でも、いただいた台本のト書きに〈あまりのウィスパーボイスでよく聞き取れない〉って書いてあるんですよ。僕は最近、声や台詞回しを褒めていただく機会が増えたんですが、いきなり全否定ですからね(笑)。

 僕の台詞のところだけ字幕を入れるかどうかスタッフも交えて審議になったんですけど「単語を立てつつ、限りなく不明瞭な発音で」となって、ギリギリのところを狙ってしゃべっていますが、確かに言ってることがよく分からない人っていますからね。

 そんな発声の基礎を全撤回して今回演じさせていただいているのは、バラエティ番組制作会社のチーフAD。

 僕はずっと地味に役者をやってきましたので、バラエティ番組に出演者として出たことはそれほど多くないんですが、10年ほど前『アナ★バン』という深夜番組で“太陽さん”というキャラクターの声を担当していたことがあるんです。

 女子アナと掛け合いをしながら番組の進行をする役目だったんですが、1年くらいたった頃「もっと番組が目指しているところを把握したうえでしゃべりたい」と番組会議にも参加したり、放送作家として企画書を書いたりするようになったんです。すると、出演しているだけでは分からない、バラエティの裏事情が見えてきました。

 たとえば、どのくらいの予算が組まれているのかとか、この人をキャスティングするならあの人は呼べないとか(笑)、まあ、いろんなことが見えたんですけど、一番クッキリと見えたのは、作る側の熱量です。

 バラエティって、観る側は寝っ転がって「あはは」って笑いながら気楽に観てるけど、作る側は寝不足でフラフラしながら、とてつもない熱量を消費して番組を作ってる。ただ、楽しんでもらいたい一心で。

 テレビの画面に映し出されているものはくだらないかもしれないけど、必死でくだらないものを作っている現場の熱量は、尊敬に値すると思ったし、ものすごくカッコいいと思ったんです。

■皆さんに小手伸也という人間を知ってもらった

 今、バラエティを作っている人たちは、僕がかかわっていた頃以上に思うところがあると思うんですよ。動画配信のほうが面白いとか、若い人はテレビそのものを観なくなってるとか。

 でも一方で、テレビの力を信じて、テレビの前で気楽に笑ってもらうために駆けずり回っている人たちがいるってことを、このドラマを通してお見せしたいという気持ちもあるんですけど、逆にそんなことは一切気にさせないのが「バラエティ制作」の美学かなとも思いますし、難しいところですね。

 と、少々堅苦しいことを言ってしまいましたが、ドラマそのものはドタバタコメディです(笑)。しかし笑いながら観ているうちに、心に響くものがきちんとある。

 例えていうなら、レストランで見たこともないエスニック料理を出され、恐る恐る口に運んだら意外とおいしかった! というような……我ながらいい例えだな(笑)……そんなドラマになっておりますので、エキセントリックな外見で食わず嫌いせず、観ていただけたらうれしいです。

 どうやら僕はエキセントリックなものに惹かれるようで、日本神話にはまったのも、神話が持つエキセントリックな一面のように思います。

 僕は劇団を主宰していて脚本も書くわけですが、「日本人として物語を書くのなら、日本神話を知っておいたほうがいいだろう」くらいの気持ちで手に取ったんですけど、古事記なんて、ありえない設定だらけだし、それこそ読み手に対するむちゃぶりの連続(笑)。

 女神イザナミは日本列島を「出産」したんですが、最後に産んだのが「火の神」で、そのせいで大やけどして死ぬんです。いや、スケールのデカい話と思ったら急に死因がリアル! みたいな。もう無理に呑み込まず、ツッコミ入れていいと思うんですよ(笑)。

 そうしてハードルが下がることで、興味が持てたり偏見が取り除かれたりもする。その助力ができたらと、イベントや動画制作、時には講演もさせていただいたりしています。まあ、知識はひとつでも多いほうが世界が面白く見えるのは間違いないと思いますから。初詣で行った神社で「ああ、ここはあの神様のところなんだ!」って思うだけでもね。

 おかげさまで平成最後の1年は役者としてこれまでにない忙しさになりました。皆さんに小手伸也という人間を知ってもらったのだから、これからもさまざまなむちゃぶりに応えていきたいと思っています!

小手伸也(こて・しんや)
1973年12月25日生まれ。神奈川県出身。劇団innerchildの主宰として脚本、演出、出演をこなす。日本神話、特に古事記に造詣が深い。俳優として数多くの舞台、映画、ドラマに出演し、『コンフィデンスマンJP』(フジテレビ系)五十嵐役や『SUITS/スーツ』(フジテレビ系)蟹江貢役を怪演し注目を集める。5月17日から映画『コンフィデンスマンJP』の公開が控えている。

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